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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
佐々木譲『沈黙法廷』(新潮社、2016年)


東京都北区赤羽の一軒家で、そこに住む資産家の独居老人の変死体が発見され、状況から他殺と断定される。捜査線上に家事代行業の女性が浮かび上がり、強盗殺人の被疑者として逮捕される(第一章「捜査」と第二章「逮捕」)……。今まで作者が発表してきた多くの警察小説は、捜査から犯人逮捕までを描くものであったが、今回は逮捕後の起訴、公判という、その後の裁判シーン(第三章「公判」)にウェイトを置いた作品。

そこでこの『沈黙法廷』というタイトルだ。カバー装幀も、大活字「沈黙」と「法廷」の2行にはさまれて被告席に立つ女性を後ろから描いている。ここから連想される内容は、被告が沈黙、つまり黙秘権を行使して裁判が混乱をきたす……みたいな展開を考えるのだろうけれど、それはみごとに裏切られる。被告は、検察官、弁護士の質問に対し、真摯に答えていくのだ。しかし、ネタばれにならない程度に明らかにすることを許されるのならば、唯一、被告が沈黙する場面があり、その理由こそが、この作品のキモであり、作者が訴えたかったすべてであるのだ。

作者の眼差しが、社会的弱者、虐げれている者に向けられているのは今までどおり。返す刀で、縄張り意識に凝り固まった警察組織や、メンツにこだわる検察側など、権力側を鋭くついているのも、また同様。それにしても、被告の女性像の描き方が素晴らしい。今の日本には、同じような立場の男女はいっぱいいるのだろう。同時に、物語の構成も、第一章・第二章では捜査にあたる警察関係者をはじめ、被告との関わりを持って登場する多くの作中人物が的確、かつ詳細に描かれているのに対し、後半の裁判シーンでは、彼らは一人の証言者として遠景に追いやられる。動から静への転換。彼らの証言は、時に被告を稀代の悪女に、時につつましく生きる女性として印象づける。正義感あふれる弁護士はちょっといい人すぎるかも。代わって大きな意味を持って登場するのが、読者の代表となって裁判を傍聴する青年だ。プロローグでさりげなく登場し、実はこの物語のもう一人の主人公になっていく青年の視線を通して、読者はこの裁判に立ち会うことになり、白日のもとにされされる一人の女性の人生を垣間見ることになる。

裁判の結果をここに記すことはできないが、佐々木譲が挑んだ新境地の、これはまぎれもない傑作である(「2時間ドラマみたいだ」なんていう感想もあるだろうけどね)。ところで、お笑いユニットの大川興業の一人、阿曽山大噴火が傍聴マニアであるのは夙に有名な話だが、僕も定年後、時間に余裕ができたならば、一度は裁判を傍聴してみたいと思ったことも、余談としてお伝えしたい。


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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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