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読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
長浦京 『リボルバー・リリー』 (講談社)



長尺490ページの長編ですが、そのほとんどが戦闘シーンかそれに準じる逃亡シーン。秩父近郊での闘いに始まり、帝都東京での決戦まで、竹やぶでのゲリラ戦、荒川・隅田川での水上戦、東京下町や廃工場での殲滅戦、そして銀座・日比谷・霞が関周辺での白兵戦……と連続する、濃密でリアルな戦闘描写に圧倒されます。


時は関東大震災から1年後の、大正末期。国家機関に純粋培養された美しきテロリスト、百合。その徹底した任務遂行能力から、各国の大使館員たちに「最も排除すべき日本人」と恐れられた百合。引退したはずの彼女のもとに、唯一恩義を感じている二人の男から依頼が届きます――この少年を護ってくれ、と。政商として国や軍に尽くすかたわら、その弱みを握り、私腹を肥やし続けていた実業家が隠匿した膨大な隠し財産の手がかりを受け継いだ少年、慎太。家族を惨殺された少年の生命を護りながら、愛用のS&WM1917リヴォルバー片手に圧倒的組織力と軍事力を有する帝国陸軍と闘う百合(つまり、リボルバー・リリー)。

最終決戦に臨むにあたって、百合は精一杯のおしゃれをしてみずからを奮い立たせます。襟元にレース飾りのついた、色とりどりの花の刺繍が細かく入っている白い絹モスリンの新しいワンピース。白い靴下に、ストラップのついたベージュのヒール。明治のヒロインたちの死に装束が、たとえば『修羅雪姫』の梶芽衣子や『緋牡丹博徒』シリーズの藤純子の着物姿だったのに対し、さすが大正時代のモガ(モダンガール)の死に装束は洋装なんだすね。おまけに髪の毛は断髪!

血まみれ、傷だらけの、まさに凄艶、という表現がピッタリの百合の姿に、慎太は、思わずこうつぶやきます。

「撃ち合いじゃない。まるで斬り合いだ」と。

しかし、いかに優秀な殺人機械として育てられたとはいえ、さすがに次から次へと繰り出してくる精鋭兵士を相手に勝ち続ける展開には無理があるかもしれません。そうした、ある種の「作り事」「お約束」を払拭するかのように描きこまれているのが、主な舞台となる震災復興期の東京の情景です。よくここまで調べたなぁ、と感心するくらいの当時の街並みや風俗描写がリアリズムを生んでいると思います。同じように、百合と慎太を取り巻く政治的あるいは社会的状況――陸軍と海軍の確執、経済界と政界のつながり、娼婦とヤクザの関係などについてもきちんと触れていて、これらがしっかりと物語の土台を支えています(つい最近読んだ月村了衛の女性二人組みのアクション小説『ガンルージュ』との差は歴然)。

――人を死の際から救うのは幸運じゃない。悪運だ。幸運は一瞬で消え去るが、悪運は背中のすぐうしろを一生憑いてくる。

この言葉どおり、悪運=死神を背負った百合の闘いは、見せかけの平穏とは無縁に、果てしなく続いていくのです。


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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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