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読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『猛スピードで母は』


長嶋有さんの2001年の作品。
芥川賞受賞作です。
ほかに文學界新人賞受賞作『サイドカーに犬』も収録。

 
15年も前の、新人時代の作品ですが、
『愛のようだ』に感じた長嶋有さんの根幹にある魅力は
やはりこのころから際立っていたのだなと納得しました。

『サイドカーに犬』は、若い女性の視点で小学生のころを振り返り、
あるとき母が家を出て、その後に父の若い愛人がするりと
滑り込んできて、ともに過ごした不可思議な日々を書いている。

『猛スピードで母は』は、小学生の男の子、慎(まこと)の視点。
シングルマザーの母との二人暮らしの中で
同世代の子どもより、少しだけ鋭い感受性を持ち、
少しだけ訳知りで、少しだけ諦めを身に付けた彼の
思春期にさしかかる日々を切り取っている。
 
どちらも世間の目から見れば、ちょっとフクザツな家庭です。
裕福とは無縁の、むしろ底辺に近い生活環境かもしれないけど
彼らはみじめさのかけらも持たず、ただ淡々と、飄々と毎日を生きている。
 
劇的なことなど何も起こらない
その静けさの中に潜むリアリティ。

特に『猛スピード・・』 の方は北海道の小さな街が舞台で、
『海炭市叙景』を彷彿させるような風景描写に寂寥感をそそられます。

長嶋さんの小説に出てくる女のひとは、見た目には線の細い、
しなやかさを持った人なのだろうと思うのですが、
内面は、詮無い愚痴や繰り言を述べたり、泣いたりするような
いわゆる「女々しさ」はなく、いろんな思いを抱えながらも
感情をコントロールし、きりりと生きている印象が強くあります。
演じるとしたら、どうも吉田羊さんの姿がちらつくのですが。

喜怒哀楽をむき出しにする幼さを、人として恥じる気持ちがある。
けれど心はそのひとの行動に、ふとした言葉ににじみ出てくる。
それを感じ取り、思いやり、つかず離れずの距離を保ちながら、
互いの関係を築いていくこと、その自己抑制こそが
長嶋さんの繊細さが生み出す美意識だと思うのです。

とても読みやすい短編集の文庫本ですが、巻末にある
井坂洋子さんの解説も、これまた凄い。

・・・人は誰しも自分とそれを見つめるもうひとりの自分を抱えているが、
長嶋有の場合、もうひとりの自分が年輪のごく内側、本能に
近いところにいるのではないか。
そして水の面を眺めるように、さまざまな層の自分を観察しているのではないか。


井坂さんが評する「(その後の長嶋さんの)核にある魂の壺のような最初の作品集」という言葉に
うなずきつつ、ひきつづき他の作品も読もうと思うのです。


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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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