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読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
樋口有介『林檎の木の道』(東京創元社)


ぼくの大好きな青春ミステリ。

思えばこのジャンルに初めて触れたのは、小峰元の『アルキメデスは手を汚さない』でした。1973年の江戸川乱歩賞受賞作です。続けて同じ作者の、ソクラテスやピタゴラスといった偉人名を冠した、偉人シリーズを読破。すっかり青春ミステリの虜になってしまいました。ところがその後、青春ミステリと銘打った作品は数多く読んできましたが、どうもしっくりきませんでした。なぜなんでしょう?
 
そんな頃、出会ったのが樋口有介のデビュー作、『ぼくと、ぼくらの夏』でした。1988年のことです。「これだっ!」と思いました。ぼくが求めていた青春ミステリの形がはっきりとわかってきたのです。つまりこういうことです。――主人公や被害者など、主な登場人物は高校生であること。警察組織とは関わらないこと。そして何よりも、舞台は夏であること。
 

高校2年生の夏休み、怠惰な日々を送っている「ぼく」は、以前付き合っていた由実果が自殺したと知らされた。その突然の死に納得がいかない「ぼく」は、自殺した由実果とも知り合いだった、幼なじみの涼子と事件の真相を調べ始めます。やがて明らかになってくる由実果の姿と、死の真相は、「ぼく」にとってあまりに哀しいものでした……。

物憂げな夏。とまどう少年と少女。切ない幕切れ。

感情を表すことのない、大人びた「ぼく」は、ただの高校生であって、けっして警察や探偵ではありません。だから、「ぼく」の目的は犯人を捕らえ罰することではなく、死んだ由実果をめぐる真相を明らかすることなのです。本当に自殺なのか? 誰かに殺されたのではないか? 警察の協力を仰いだり、警察から協力を依頼されたりする高校生を主人公にしていないところが、権力から遠く離れた存在であるべき青春の姿をみごとに表していると思います。光と影が織りなす夏の日々は、生と死、喜びと哀しみ、永遠と刹那といった相反する要素を裡に秘めた、切なくてやりきれない毎日です。石川セリが唄う「♬哀しみさえも焼きつくされた」「♬思い出さえも残しはしない」夏の日々……。夏の終わりとともに、少年と少女は、一つの季節を卒業していくのです。

1996年の作品ですから、作中、まだ携帯電話はそれほど普及していません。主人公たちも、今の高校生よりはずっと大人びています。だけど、いつの時代でも変わらないものを彼らは持っています。青春ミステリとは、登場人物の年齢だけで区別されるジャンルではありません。驚天動地のトリックも、快刀乱麻の謎解きも、すべて二の次。そこで重要なのは、ひと夏の体験が少年や少女をどう変えたのかということ。

彼らの心のなかにある「哀しみ」という感情を描き切ってこそ、青春ミステリと言えるのではないでしょうか。

そういった意味で、急逝した永井するみの『カカオ80%の夏』(2007年)も、忘れられない青春ミステリの傑作ですよ。


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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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