♪おすすめ Blog

カテゴリ

最新コメント

Link

ブックオフオンライン【PC・携帯共通】

このブログをリンクに追加する

プロフィール

おもしろ本棚

Author:おもしろ本棚
読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

検索フォーム

月別アーカイブ

QRコード

QR

おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
藤谷治『全員少年探偵団』(ポプラ社)
全

Amazonで詳細を見る

小学校の頃に学校図書館を利用していた皆さんなら誰もが一度は手にしたことがあるのではないでしょうか、ポプラ社版の江戸川乱歩「少年探偵団シリーズ」。怪人二十面相を相手に、名探偵明智小五郎を助けて大活躍する小林少年を団長とする少年探偵団。『妖怪博士』『青銅の魔人』『怪奇四十面相』など、懐かしく思われる人も多いことでしょう。たしか雑誌『少年』にも連載されていて、夏休みと正月だけに買ってもらえたときには、他のマンガと同じように大喜びで読んだものでした。当時、東京は多摩のハズレに住んでいた僕の周囲には、怪人二十面相をが潜んでいそうな場所がいたるところにありました。神社や古寺、墓場を言うまでもなく、芋の貯蔵庫になっている防空壕、打ち捨てられた廃屋、首吊り事件の松がある沼、昼でも人気のない焼き場(火葬場)、きちがい女が住んでいる大きな家……子どもだった僕にとって、乱歩の描く少年探偵団の世界は、けっして作り物の世界ではなかったのです。


 
こうした僕と同じような乱歩体験、少年探偵団体験を共有する作家たちが、奇しくも乱歩生誕120年記念の昨年、版元も同じポプラ社から、装幀もオリジナル版そっくりの新作を発表することになりました。『みんなの少年探偵団』をはじめ全4冊が刊行され、今回ご紹介する『全員少年探偵団』はシリーズ第二作目にあたります。

舞台は現代の東京。小林少年をはじめ団員の少年たちは、みんな携帯電話で連絡を取り合い、パソコンのインターネットで情報を集めます。このあたり、すごい違和感を感じてしまいますね。ツールは最新のものでも、それを使う少年たちの会話や行動は、オリジナル版のまま。もちろんあえて作者は乱歩独自の言い回しや文体を真似しているのでしょうが、今の小学生からは大きくかけ離れた少年たちはいい子ばかりです。明智探偵は下北沢の一戸建てに住んでいて、もちろん私立探偵として全国的に有名です。クロワッサンに紅茶の朝食を摂り、奥さんの文代さんが運転する自動車で現場に駆けつけ、抜群の推理力で事件を解決します。変装も二十面相なみに巧みだし、携帯電話は持っています。誰もが時代設定に合わせて少しづつ変化しています。

一番変わらないのが、怪人二十面相その人。最後に正体を現すまでお馴染みの変装姿で登場するのですが、えりにカラーの入った灰色のシャツに、灰色のスーツ、灰色のエナメル靴、すべてをおおっている灰色のマントのいでたち。そんな服装の、長い髪をなでつけた、耳のとがった、いかり肩の男がいれば、普通、誰だって怪しい人だと思うでしょう。まして職業は、芸能プロダクションの社長ですよ。携帯電話やパソコンを使っている様子はありませんが、取り込んだ映像データをDVDに落とし込むことはできるようです(子分にやらせているのかも)。アジトは府中競馬場近くの廃業した銭湯。地下には今までに使った変装道具や大道具類がきちんときちんと保管されいます。

変わらないポリシーで泥棒稼業を続けている二十面相は、「えらそうなことをいったって、人のものをぬすむのは、こそどろとおんなじだ!」となじる小林少年に向かって、「泥棒の美学」をこう語ります。「わたしはね、世界を美しくするためなら、どんなことだってするんだ」「しかもわたしは、ただぬすむんじゃない」「わたしがいなければ、夜の東京に豹が走ることもなければ、銀座の上空に巨人のかおがあらわれることもなかったのだ」「わたしは君たちに美しいものをあたえる。そして君たちから美しいものをいただく」。

ああ、なんということでしょう。人をころしたり、きずつけたりしないだけであはりません。二十面相はただのこそどろではなかったのです。それどころか、しっかりとした考えをもったりっぱな人だったのです。ぼくはすっかり感心してしまいました(←この文章、原文を真似てみました)。

「柿右衛門の皿で、猫にえさをやっていたんだぞ! わたしはけっしてゆるさない。美しいものを軽く見るのは、泥棒以上の犯罪だよ」。

新シリーズ全作はもちろん、乱歩のオリジナル版を読み返したくなりました。
 
 
スポンサーサイト

テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
http://marmadays.blog2.fc2.com/tb.php/844-a03c236d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)