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読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『ヨシモトコレクションの世界』


昨年の秋、ご両親の住む福岡にUターンすることになった友人Kが置き土産がわりにと、一枚のチラシを手渡してくれた。

国立科学博物館企画展『ヨシモトコレクションの世界』。
「ヨシモト」ですとぉ?
しかも、そのコレクションなるものが、野生動物の剥製だというではないか!


冬の網走の、受付の女性きりいない小さな郷土博物館を訪れたおりのことは忘れられない。
二階建ての洋館を利用したその資料館には、ヒグマやセイウチ、トド、大鷲など北方野生動物がひしめきあうように展示されていた。
その密集ぶりたるや、天井から床まで、息ができなくなりそうな大盛況。
クマ!ツル!天井にワシ!シカの脚の間のスペースにリス!みたいな。
展示室に行くと、彼らが中から一斉に、イラッシャーイ!と向かってくるあの迫力よ。

そういえば、同じ北海道・塘路の資料館の剥製コーナーも凄まじかった。
地元の人がしょっちゅう、車にぶつかってきたような動物を「これあげる~」と持ち込んでくるから(これを専門用語で「寄贈」という)、剥製にしてもしても展示しきれず、しかたがないから近くの公営アパートを借りて、剥製御殿よろしく住まわせているそうだ。
きっと、押入れを開けたらアザラシが転がり落ちてくるんだろうなぁ。
ああ、夢のようだ。


そんなぐあいに剥製愛に目覚めたヨシモトさんの元に、ヨシモトさんという人の剥製コレクションの情報が届いたとしたならば、これは何をおいても見物に行かなくてはならないではないか。
というわけで、お雑煮と餅をしこたま食べた後で、のんびりと国立科学博物館へ出かけた。

620円の当日券を買って展示室に入ると、いきなり思わずおーっ!と声が出てしまう。
科学博物館は、昭和6年にできたネオ・ルネサンス様式の建物だそうだ。
3階まで吹き抜けのホールの白亜のドーム天井には、ステンドグラスが嵌っている。
そこの床には野趣溢れる櫓が組んであって、ドン!ドン!ドン!と上層に向かってさまざまな動物が鎮座しているではないか!
一番下にはシマウマや巨大なツノをしたヤギが、第2層には優美なガゼルやハイエナが、そして最上層の真ん中には、アンテロープらを従えて、2mはあろうかというホッキョクグマが二本足で立ちあがり、ドームに向かって咆哮しているのだ!
こ、これは凄い。
階段で3階に上がってみると、フロアの手すりから、そのホッキョクグマの顔と鉢合わせしてしまう。
コドモたちがやって来るたびにギャ~と叫ぶのがまた可笑しい。
見ると、ホールの四隅にもこれまた3層の段があって、マントヒヒやらオナガザルやらプーマやヒョウが、ぶら下がったり立ちあがったり牙を剥いたりしてこちらを見ている。
シマウマに、触れそうなほど近くに寄って覗き込むと、古い剥製なのだろう、喉もとからお腹にかけて、開いて縫った痕がはっきりとわかる。
ここをこう切って開いて、骨や内臓を取り出したのか・・・。
そしてシマウマは、タテガミも順番に縞々に生えてくるんだな。
あぁ、わたし、動物園より剥製の方が好きなんだわ。

これらの剥製は、すべてワトソン・T・ヨシモト氏が1997年にまとめてここへ寄贈したものだという。
ヨシモト氏は、ハワイ生まれの日系二世。
山口県から移住した両親を中学生の時に相次いで亡くしたため、学校をやめて家計を支えるために大工見習いとして懸命に働き、続いて建設会社で働きながら学び、しだいに周囲の信頼を得て、実業家として立つ。
しかしやがて、日系人として日米間の戦争の波を被ることになる。
両親を失ったことで帰国の選択肢が無くなり、日本国籍を捨てる決断をしたヨシモト氏は、祖国アメリカのために、建設業で大いに貢献する。

私は日米開戦にまつわる日系人の苦難の歴史について詳しいことを知らないが、ヨシモト氏は、それはそれは苦労をしたことだろう。
実業家として成功した後も、アメリカへの忠誠を誰よりも身をもって示す必要があったはずだ。
そうした中で懸命に働き、ビジネス上の付き合いの必要もあって、彼は本格的に狩猟を始める。
アメリカ人にとってハンティングは、日本のビジネスマンのゴルフみたいなものなのだな。
そしてハワイで名士としての地位を築いたあとで、氏は48歳にして初めて、国外にハンティングに出かける。
この頃には、ヨシモト氏の狩猟技術、そしてタッグを組んだクラインバーガー社がそれを剥製化する際の丁寧な仕事ぶりが評判を呼び、博物館などから剥製標本製作の依頼が舞い込むほどになっていた。
日本の科学博物館も、1989年にトナカイの標本製作を依頼している。

氏は始め剥製を自宅のコレクションルームに飾っていたが、数が増えるにつれて手狭になり、島の博物館にその多くを寄贈する。
大型動物の少ないハワイで、子供たちにたくさんの動物の姿を見せたいと考えたからだった。
しかし寄贈して5年後に展示が取り下げられてしまい、返却にも応じてもらえなかったことから(日系人蔑視のゆえかどうかはわからないが)、氏はすべてのコレクションをわざわざ買い戻して、マウイ島に ”Wildlife Museum” と名付けた私設博物館を建てる。
事業を人手に譲って退いてからは、氏は毎日ここに通って見学者を待ち受け、特に子供たちがやって来た際には、自ら説明を買って出るほどであったという。
それらが今、ここ日本の博物館にそっくり引っ越してきているわけだ。


今回の展示では、ヨシモト氏の書斎も再現されていた。
大工として家具製作も手掛けていた氏の手作りのテーブルの上には、籠に入ったニワトリの剥製、つまり「チキン・バスケット」。
このジョークはしばらくわからなかったけど、そうか、ケンタッキーフライドチキンか!
そして机の向こうでは、蝶ネクタイをしてメガネをかけたマネキンが、おどけたポーズをとっている。
苦労の多かったヨシモト氏だが、子供好きで、ユーモアに溢れた紳士だったのだろう。
壁には、氏の私設博物館にやってきた子供たちからのお礼の手紙やカードが、にぎやかに飾ってあった。

そして、同じ種類の動物でも、地域によって少しずつようすが異なることから、特にカモシカ類(正確には偶蹄目ウシ科)については多様なコレクションを持ち、狩猟のさいにも詳細な付帯記録を残して、それがDNA研究の進んだ今でも、貴重な情報となっているという。
展示会場のあちこちから、「ヨシモトさんって知ってた?」「ヨシモトさん、すごいよね」といった来館者の声が聞こえてくるのが、実に誇らしいではないか。
(いや、彼とは何のつながりもないのですが。)

展示会場には20数ページのパンフレットが無料で置かれており、そこにはヨシモト氏の年表から動物の分類図、海外ハンティングで得られた標本数、そして「フィールドノート」と題して、100種類近い標本を採取した際の旅のこぼれ話などが一つ一つ記されている。
これが読んでいて最高に面白い。
たとえば、シマウマを追っていた時には車が跳ね上げた丸太が顔面に直撃し、飛行機で都市部の病院へ運ばれて治療を受けた翌日にもうハンティングに出たとか、エチオピアでは飛行機に愛用の銃を置き忘れてしまい数日間狩りができなかったとか、ライオンを狩る際にはハイエナの届かない高さにエサを吊るしておびき寄せようとしたが、結局通りすがりのライオンを仕留めることができた、とか。
これはきっと、彼が93歳の時に書いた自伝『Yoshi』からの引用ではないかと思うが、この本を読めたらどんなに愉しかろうと思う。
残念ながら翻訳は出ておらず、amazon.comでも原書を発見できなかった。

この企画展を観たあとで、改めて科学博物館のもう一つの建物にはいっている、ヨシモトコレクションの常設展示を観に行った。
2会場は離れており、誘導の案内が目立たなかったけれど、むしろこちらを先に見てから企画展へ移動した方がよいかもしれない。
科博を訪れたことのある人なら大抵の人がびっくりするはずの、地球館3Fにずらりを円を環いて並ぶ、夥しい剥製の展示。
説明板が古くなってしまって読みづらいのだが、大小さまざまな動物やトリたちが、フロアいっぱいにひしめいている。
今回改めて驚いたのは、舞台中央に屹立する、ラクダ。
ラクダがこんなに巨大だとは思わなかった。
私の中で、巨大な動物といえばアメリカバイソンかサイなのだが、隣にあるサイは、ここのラクダ足の下を通れてしまいそうだ。
今まで知らなかった!ラクダは百獣の王なのだな。 (・・・違)

とまぁこんな具合に数時間剥製を眺めて感嘆して、なんと素敵なお正月だったことだろう。
気がつけばもう閉館時間が近い。
館内のカフェで、どう見てもそうとは思えない、しかし「これはパンダです」と強気で主張する「パンダパフェ」なるものを寸志として注文し、東洋館よりは美味しいコーヒーを飲んで新春を言祝ぎ、科博を後にしたことであった。

ヨシモトコレクションの世界』は、1月18日(日)まで開催。

ちなみに、我こそは大型動物愛好家である!という方は、機会があったらスカイツリーを見物するついでに、錦糸町駅前のショッピングビル、「オリナス」を訪れてみてください。
入ってすぐの Victoria Golf に、巨大なヘラジカの剥製が展示してあります。
これがすごい!
ただし触ってはいけません。
けど、店員さんが向こうをむいている隙に・・・・、いえ、いけません。いけませんよ、さわっては。

●44ヨシモト mixi → コチラ
 
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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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