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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『海うそ』
海うそ海うそ
(2014/04/10)
梨木 香歩

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梨木さんの書下ろし。
いろんな小説を書かれる方ですが、『f植物園の巣穴』が好きな私には
ストライクゾーンの作品でした。
 
 
時は昭和の初め。
人文地理学者の秋野は、恩師が遺した未完の論文にある
タツノオトシゴの形をした南九州の離島に心惹かれ、
単身調査に乗り出します。

島の人びとの善意に頼りながら、奥深い山の険しい自然に歩み入り、
本土にはない植物や動物を目の当たりにして、遠い祖先の代から
土地に宿る神々の存在を知る。

明治以後の近代化によって、この島の神は無きものとされ、修験者たちは
島を追われて本土にわたり、いくつもの悲劇に遭った。

秋野は島の若者の案内で、山の頂に向かいます。
集落ごとに言葉も暮らしも違う小さな島。民俗学的な関心も
さることながら、彼の中にはどうしても解決しない自らの心の課題があった。

両親の死と許嫁の死。

喪ったものの大きさに耐えかねて、ここまで来た。
秋野は島びとと共に、本土を臨む海に「海うそ」と呼ばれる
蜃気楼を見て感じ入ります。
果たして、説明できない思いに答えはあるのかないのか。
別人だと皆に驚かれるほどの肉体の逞しさを得ても、
彼は結局、論文を仕上げることなく島を離れ、本土に戻る。

うーむ。梨木さんならではの自然描写は、目の前に景色が広がり
南国の密生林のむっとした息苦しさ、青さが匂い立つようです。
それだけでも十分に読む価値があるのですが、
とりとめないといえばとりとめない、このお話の〆は五十年後。

島は橋や道路のインフラが次々整備され、リゾートアイランドとして
急激な開発が進んでいます。偶然にもその仕事に携わる次男から話を聞いて
秋野はいてもたってもいられなくなり、80を超えた老体で再び島へ足を運ぶのです。

見る影もなく形を変えた島の、新たに作られた「名所」をめぐり、
秋野は当初は悲憤に駆られたものの、時を経た今、息子と再び「海うそ」を見て
失われたものは自らの中に蓄積し、それらは今につながるのだと、気づくのです。
万物はめぐりめぐる。それを体感した秋野は、するりと心の重荷を解き、
つらい過去が昇華するのを感じます。

・・・・・・・・・

年を取ったことで本の読み方は変わってきたけれど、
さすがに80代はまだまだ先の話、それでも実にすんなりと
感じ入ったのは、故郷の老いた親が頭に浮かんだからかもしれません。

この夏に帰省したとき、息子が言った。
「じーちゃんとばーちゃん、仲よくなったよね」
だって会話してるし。オレ記憶にある限り、二人で話なんてしてなかったよ。

おおそんなこと、アンタも気づいてたのね。
昔から決して仲良くなかった両親が、父の定年後、ふたりで日がな一日を
過ごすようになって早20年あまり。

体の老いとともに気持ちは穏やかになるようで、今では弱きもの、小さきものに
なってしまったのを、遠く離れて住む娘としては胸痛む思いでいるのですが、
家のものを少しずつ処分しながら静かに暮らす生活を、波立てることなく
見守りたいと願うこのごろ。

この先さらに自分も数十年を生き延びたとしたら、きっと感じるものがあるだろう。
そんなことを思ってた夏だったので、秋野が遠い存在に思えなかった。

出版社サイトでは、この作品は震災後初の書下ろしで、大切なものを喪うことを
テーマにしているらしく、ああ、そんなねらいもあったのかと。

梨木さんの力だから書ける作品なのでしょうね。
 
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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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