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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
山本兼一『修羅走る関ヶ原』(集英社)
修羅走る 関ヶ原修羅走る 関ヶ原
(2014/07/25)
山本 兼一

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世に言う「天下分け目の戦い」――関ヶ原の戦い。徳川家康率いる8万の東軍と、石田三成率いる8万4千の西軍が、真正面から激突した日本合戦史上最大の戦い。本書は、そのわずか一日の模様を、東西両軍の武将たちそれぞれの視点から描いていきます。


欲の皮の突っ張った狸親父、権謀術数、奸智に長けた家康。豊臣秀吉の義に報いようと周囲の反対を押し切って兵を挙げた三成。――作者の視点は単純明快です。「義」のために生きて死ぬことを潔しとする島左近、大谷刑部、蒲生郷舎ら西軍諸将に対し、お家存続のために西軍を裏切る小早川秀秋。彼ら実在の武将たちに混ざって、三成の命を受けて小早川の裏切りを阻止し、家康の首を狙う二人の兄弟の活躍が、映画でいうところのカットバックの手法を使って描かれています。

この手法がいい効果をもたらしています。ある武将の視点から描かれたパートが終わると、それを受ける形で何らかの関係を持った次の武将(例えば対戦中の、例えば待ち伏せ中の)の視点にバトンタッチされることで、刻一刻と変化していく合戦場のダイナミズムが伝わってきます。同じ時間と、同じ場所で生死をかけて対峙する男たちの策謀と策謀、戦いと戦いの様子が立体的に描かれているのです。


当時の合戦は、ある種、きわめて儀礼的な形で始まります。対峙する両軍(主に大名家同士)が、時が満ちた頃を待って法螺貝を吹き鳴らし、陣鐘を叩き、合戦の開始を告げます。鉄砲隊が口火を切り、弾込めの間隙を許さぬように弓隊が矢を放ちます。こうした飛び道具戦のあと、長柄の槍を突き出した槍衆が隊列を組んで前に押し出し、ようやく白兵戦となります。ここからは、全体を見ながら采配をふるう指揮官の力量と、いかに勢いに乗って相手方を駆逐するかが勝敗を決めていきます。

兵力においても、陣地の配置においても圧倒的な有利さを誇った西軍が敗れるのは、家康の根回しで裏切りや日和見を決め込んだ小早川秀秋や毛利秀元らに原因が有ることは歴史の真実です。こうした「義」に叛く大名たちに、血を吐くような思いで、翻意をせまる家臣たちの姿は感動ものです。

中でも、「主に従えば、大義を裏切ららねばならぬ。大義を守ろうとすれば、主を裏切らねばならぬ」「それがしは、天地神明に恥じぬ生き方を選ぶ。とことんまで、それを貫く所存」と、大儀に生きることを選ぶ小早川の重臣、松野主馬。主に対して弓・鉄砲を向ける事ができない主馬は、それでも小早川軍の進撃を止めようと、武器を捨て隊列を組んで道を塞ぐのです。「この世に生を享けたのは、なんのためか。強い者におもねり、尻尾を振って生きるためではない。断じてない。義を貫く。人しての節を曲げぬ。それが生きる値打ちだと信じている。義を貫いてこそ、生きる価値がある」。

こうした思いは、三成憎しで東軍に加担した秀吉恩顧の武将たちにも共通するものがあります。

秀吉子飼いの猛将、福島正則は、今日の戦いに敗れ自刃して果てた大谷刑部から密かに届けられた、ただ一行の書状に震えます。「くれぐれも」――病をおして書かれたこの一行が意味するところを瞬時に理解する正則。最終章で、正則が家康に対し、今後の豊臣家への存念を問い糾すシーンの悲壮感、緊迫感。その後の歴史を知っている僕たちにとっては、無残にも砕ける正則の願いが悲しすぎます。

本書は、今年2月に57歳で亡くなった山本兼一の遺作です。作者の急逝によって連載時そのまままの姿で発表されていますが、もとより加筆や修正が施されなくとも、時代小説の歴史に残る名作であることは間違いないでしょう。
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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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