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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『HHhH (プラハ、1942年)』
HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)
(2013/06/28)
ローラン・ビネ

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新年2作目は、重厚でハードな小説でした。
タイトルのとおり、これはナチのユダヤ虐殺に関わる小説です。

主たる登場人物はラインハルト・ハイドリヒ。
ヒムラーに次ぐナチ親衛隊の実力者であり、ユダヤ人問題の解決法として
全て虐殺することを率先して行わせた人物です。
 
ネットで画像を検索すると金髪のイケメン。
血も涙もないハイドリヒには「金髪の野獣」なるニックネームがあったそう。
 
そもそも、印象的なタイトルの“HHhH”とは
 
Himmlers Hirn heißt Heydrich の略で、
「ヒムラーの頭脳は ハイドリッヒと呼ばれる」という意味とのこと。

ハイドリヒは、イギリスと在英チェコスロヴァキア亡命政府による暗殺が企てられ、
1942年5月、プラハに送り込まれた3人の精鋭軍曹らによって
オープンカーのメルセデスに乗っていたところを襲撃され落命します。

この史実の背景にあるものを、1972年生まれの若き作家が掘り起こして
書き綴った渾身の力作がこの小説です。
ビネはパリ生まれですが、スロヴァキアの血を引く人で、
兵役でフランス語教師として同国に赴任したという経歴の持ち主。

現地の美しい恋人と愛を深めながら、チェコスロヴァキアのユダヤ人が受けた
凄惨な処刑の歴史について、何年もの月日をかけて執拗に資料を探し出し、
隈なく目を通したそれらを整理し、「創作」ではなく、いかに「史実」としての
作品を描くかに腐心しています。

その結果出来上がったのは、ドキュメントとも小説ともつかぬ新スタイルの作品です。
ハイドリヒ本人と、今も故国で英雄視される暗殺者のガブチークとクビシュを
対比させながら、同時に存在した数多くの人びとの視点を、半ページから2ページ程度の
短い章仕立てにして、まるで映画のフィルムを断片的に見るように描いていきます。

ビネはそれが「創作」にならないように動詞に気を使う。
断定を避け「僕は想像する」を多用する。同じ題材を描いた他の小説を読み比べては
どれとも違う自分なりの実験的な小説を完成させていく。

その手法も相まって、この作品は世界中で大絶賛されているようです。
物語のクライマックスとなる暗殺シーンは、息詰まるような迫力があります。

しかしそこが史実の滑稽さと可笑しみで、ガブチークの銃撃そのものは
弾の不発で失敗に終わり、続くクビシュの手による爆弾の投げ込みも
ビミョーに的を外してしまうのです。
が、車体に与えたダメージにより、ハイドリヒの体内に破片が突き刺さります。

彼は通りすがりのドイツ人女性の通報で救急搬送され、高名な外科医の手術を受け、
命に別状なし、の診断をいったん受けます。しかしなんということか、
創による感染症で一週間後に亡くなってしまう。それが神の審判だったのか。

もちろんこれで事が収まるわけはなく、結果的にナチの報復として、
暗殺者たちはもちろん、彼らを匿ったとして二つの村の住人が皆殺しにされ、
さらに重苦しい歴史は続いていくのですが。

・・・

世界史に疎い私は、ユダヤ人が受けた迫害を描いた小説や映画に触れるたび、
おお、こんな国でもそんなことがあったのか、とただ驚くのみで
やはりちゃんと理解できていないのだと思います。
そもそも、なぜユダヤ人がそこまで嫌われるのか、その感覚的なところが
どうしても遠い国の人間として掴めていないのです。

Wikiによると、今のユダヤ人は世界で1300-1400万人。
うち500万人以上はアメリカ在住で、あとは広く各国にまたがって
数万から数十万人の規模で暮らしているらしい。

その数字は東京都民とほぼ同じです。その程度の人数しかいない民族が
祖国を持たずに散らばっている。虐殺がなければ、もっと多かったであろう人々。

村人を一列に並べて打ち殺すやり方では、兵士のトラウマが酷過ぎて
ガス室という、画期的?なやり方を編み出したのだとか。それさえも、
遺体の処理には手間どり、負担の大きすぎる作業であった。

少数の権力者による恐怖政治が狂気の歴史を生み育てていく。
人は人に対して、ほんとうに残酷になれるものなのだなあと
あらためてショックを受けた小説でした。

重かった。
  
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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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