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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『流星ひとつ』
流星ひとつ流星ひとつ
(2013/10/11)
沢木 耕太郎

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藤圭子さんが、かつて28歳で引退発表をしたころに
沢木耕太郎さんが単独でインタビューして書きためた作品です。

そのときは周囲への影響を慮り、結局沢木さんの判断でお蔵入りにしたものが、
藤さんの非業の死によって、あらためて世に送り出されることになったそう。
 
インタビューのまとめとしては画期的で、
ホテルのバーを舞台にウォッカのグラスを重ねながら交わした
会話体で全文が成り立っており、藤圭子という異才を持った
歌い手の背景を客観的に綴る地の文はありません。

だからもちろん、彼女の全盛期を知らない人には
よくわからないかもしれないけれど、書かれた時代を思えば
その歌声を聴かぬ人はなかったと思われるので、
世に出ていれば、それはそれでセンセーションを巻き起こしたでしょう。

浪曲師として街から街を練り歩く両親(しかも母は盲目)の元、
北国の最貧困家庭に生まれ育ち、小学生のころから
才能を買われて場末の宴会場で歌い続けた少女。

母や他のきょうだいとともに、父の凄まじい暴力に耐えた少女は
希望も絶望も心に持たず、ただある日々を無目的に生きてきた。

歌が好きなわけでも嫌いなわけでもない。
それでも天性の才能と鋭い感覚が備わっていたことで
彼女は他とは一線を画する存在に育っていった。

稀な美貌とハスキーボイス、年頃の少女に似合わぬ達観。
スカウトされて東京に出て、数年の下積みの後に出した歌で
大ヒットを飛ばし、一躍昭和歌謡のスターとなる。

「無心」が強みだったと、このインタビューで10代の自分を
振り返る彼女は、生い立ちを恥じるでもなく、また逆に
過去に慈しみを持っているふうでもない。

ただ直感的に生きてきた、才能あるひとの孤高な姿が
蓮っ葉にもとれる言葉の端々に見受けられて、それを確実に
切り取った沢木さんの筆力は、やはり凄いと思わずにいられない。

一方的なインタビューではなく、かつて『深夜特急』時代のパリの空港で
偶然の出会いを果たしていたことを沢木さんから聞かされると、
彼女は俄然興味を引き出され、互いの感情を絡ませるように
ふたりの会話は深くねっとりとしたものになっていく。

・・・

「藤圭子」の歌をテレビで聴いていた私は、まだ意味もわからぬ子どもでした。
ネットで悲報を知ったときに、あらためてYoutubeで昔の映像を探し
かつてのヒット曲に耳を傾けてみました。

感情を表に出さない凛とした顔つきで、冷たいまでの美貌で
潰れたような太い声で絞り出す、孤独な女の歌は
今更ながら二十歳前後の女性とは思えぬ迫力に満ちていました。
同時代にあった多くの演歌のように、女が男に媚びる歌ではなかった。

この本を読みながら、またもいくつもの歌を次々と聴き直し、
人生そのものが小説であったかのような彼女の生きざまに
それが「選ばれた」ひとのものだったのだなあと、しみじみ思いました。

芸能界というマスマーケットで売れたことで、彼女は自分をなくしたのだと
言います。「無心」には歌えなくなった。どう歌うか。どう思われるか。
喉の手術をしてからは、よりクリアになった声に、むしろ「本来の自分ではない」
という違和感を抱き、そのギャップに悩んでの引退宣言。

ピュアでブレない、それゆえに生きづらい人だったのかもしれません。
彼女の人生が閉ざされた今、この本に描かれた姿が、過去の一時期のものであっても
人生に負った寂しさ、厳しさを表していることに胸の奥が痛い気がします。

これを読んだヒカルさんは、何を思うだろうか。
と考えると、沢木さんに大人のずるさも感じてしまったりするのですが。
 
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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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