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読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『ペコロスの母に会いに行く』 
ペコロスの母に会いに行く  映画パンフレット 監督 森崎東 キャスト 岩松了赤木春恵 加瀬亮、竹中直人、大和田健介原田知世原田貴和子ペコロスの母に会いに行く  映画パンフレット 監督 森崎東 キャスト 岩松了赤木春恵 加瀬亮、竹中直人、大和田健介原田知世原田貴和子
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赤木春江は満州の引揚者だというが、幼少のころ、九州のどこかで暮らしていたのだろうか。
彼女の第一声を聞いて、そのあまりに自然な長崎弁のイントネーションに驚いた。
「ゆーいち〜。ネズミ捕りば踏んだ〜。」
 
 

映画『ペコロスの母に会いに行く』は、長崎市内で、サラリーマンと漫画家とミュージシャンの3つの草鞋を履く冴えない男(岩松了)が、痴呆の進みつつある母を独り息子とともに世話をする、そんな日常を描いた作品だ。
息子の顔さえだんだんに忘れてゆく母を、「なんねぇ、オイのおらん時に外に出たらダメってゆうたやろうが〜もう」などとボヤきながらも甲斐甲斐しく面倒をみ、母が唐突に始める昔語り――幼なじみのチィちゃんのこと、とうに亡くなった夫のことなどーーに耳を傾け、それを深夜の三畳書斎でカリカリと漫画に描いてゆく主人公。
母の痴呆がいよいよ進んだので、男と息子は母を郊外の介護施設に入居させることにする。

母の頭の中は、徐々に昔の記憶に還ってゆく。
原子爆弾の災禍をなんとか逃れたものの、癇癪持ちで神経症の夫からは日夜責められ、生活も楽ではない。
少女の頃に別れたきりの親友チィちゃんは、どうしているだろうか。
9人の弟妹の面倒を見ながら一日中働き通しのチィちゃん。
「ウチはどうせ、大きくなったら口減らしで天草に売られるとよ」と呟いていたチィちゃん。
(小さなチィちゃんが予見した運命は、石牟礼道子が哀切もって描いた水俣の里の、力なき人々に押しつけられた悲劇と不可分の関係にある。)

幼い息子を背負って長崎の花街を訪ねた母は、そこで苦界に身を落としたチィちゃんと再会するが、その後しばらくしてチィちゃんは、原爆症で薄幸な若い命を散らしてしまう。
息子の手を引いて、慟哭する母。
母にとって、チィちゃんにとって、幸せとは何だったのだろう。
主人公は、介護施設で半分以上夢の世界に入ってしまったような母をみながら、そんなことに思いを馳せるのだ。


岩松了は、これまで知らなかったが、長崎の出身であるらしい。
長崎のどこの呑み屋にも必ずいそうなオヤジ、愛すべき主人公を、これぞ自然体という風情で演じている。
登場人物たちの、「しかぶる」「ゆうてはってた」といった生活感あふれる長崎弁を聞くのは久しぶりだ。
そして驚くべきことに、昭和のお茶の間女優・赤木春恵が、全く何の違和感もなく、本当にそこに生活しているかのように存在しているのだ。
当年とって90歳。
この人は、こんなに偉大な女優だったのか!

映画の終盤、主人公は母を車椅子に乗せて春節の夜祭り見物に連れ出す。
旧市街を賑やかに照らし出すランタンの灯りにつられてきたように、夫の、チィちゃんの、懐かしい人々の魂が母の元に還ってくる。
中島川にかかる石橋の上で、幸せそうに微笑む母の姿。
哀しみや苦労など辛いことばかり多かったように見える母だが、そうして積み重なった思い出のひとつひとつが、すべて大切な歴史となって、心の中に沈み重なってゆくのだ。
一人一人の、大切な時間、大切な思い出。
幸せとか、不幸とか、そういったものを超えた大きな大きな記憶。
いつか母は、その大事な記憶を胸に抱えて、ここから去ってゆくのだろう。
微笑む母のスナップ写真を撮りながら、主人公はそれを心に留めることができたのだと思う。


映画の冒頭で、いきなり宇崎竜童がワンシーンだけ登場するのに驚いていると、ドラマの要所要所で、思わぬタレントたちが愉しげにスクリーンに現れ、ウインクを投げては消えてゆく。
ハチャメチャなバーの常連客・志茂田景樹、色町で働く美しいサヘル・ローズ(私は彼女を心から応援したい)、そして、いつの間にか年齢を重ねていた原田知世が、エンドロールで「愛情出演」とクレジットされていたのは、長崎を舞台にした十代の頃の彼女の主演映画『愛情物語』へのオマージュか、など、映画の中の小さな宝探しをするのも愉しい。
しかし何よりも、岩松了の好演と、それにもまして赤木春恵を再発見できたことを慶びたい。
そして、タウン誌の連載漫画を、全国公開される映画にまで育て上げた、長崎の人々の心意気に拍手を贈りたい。

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ペコロスの母に会いに行くペコロスの母に会いに行く
(2012/07/07)
岡野 雄一

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テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画

コメント

BSのスペシャルドラマでもやっていました。そちらは、イッセー尾形と草村礼子のコンビでした。
だいたい男の人って、自分の母親がぼけてきたときに中々それを直視できず、逃げの姿勢になる人が多いような気がします・・・。この作者は困りながらも、ボケた母をより愛しく思えて気持ちが伝わります。このレビューを読んで、岩松X赤木(先生役しか知らない)版も観てみたくなりました。
[2013/12/15 19:15] URL | ヴェス #- [ 編集 ]


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