♪おすすめ Blog

カテゴリ

最新コメント

Link

ブックオフオンライン【PC・携帯共通】

このブログをリンクに追加する

プロフィール

おもしろ本棚

Author:おもしろ本棚
読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

検索フォーム

月別アーカイブ

QRコード

QR

おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『沈黙の町で』
沈黙の町で沈黙の町で
(2013/02/07)
奥田英朗

商品詳細を見る


地方都市の公立中学校の校舎の屋根から、2年生の男子生徒が転落死した。
背中には、誰かにつねられたとみられる内出血痕が21ヵ所。

事故か事件か、その背景に虐めがあったのか―

・・・滋賀の大津事件はまだ記憶に新しいけど、どこの学校でも起こりうる問題を、
被害者、加害者、周辺の関係者すべての立場から深く深く掘り下げた、
奥田さんならではの社会派小説です。

ううむ、マイベスト更新かも。
 
 
被害者の生徒は、地元の名家である老舗呉服店の一人息子、名倉くん。
女子より小柄で非力な彼は、テニス部に所属しながらも運動神経はゼロ。
そのクセぼんぼん育ちで金品を見せつけては空威張りする、空気の読めないヤツだった。
幼いというよりも、基本的にコミュニケーションに障害のあるタイプ。

転落する直前まで、屋根の上で一緒にいたのはテニス部男子4名。
同級生の死に彼らは関わったのか否か。警察と若き検事が事情聴取を行うけれど、
多感な時期の彼らの結束は固く、本当の声は聞こえてこない。

好奇と同情、あるいは非難の目に晒される、名倉一家と加害者側の生徒らの家庭。
ただし父親の存在はどこの家庭も薄く、スポットは母親にあてられる。
「うちの子はいじめられていたのか?」
「うちの子がいじめていたのか?」
真実を知りたくて、知ってしまうことが怖くて、それでも
わが子を守りたい、どんなエゴであろうと助けてやりたい。
「鯉がパクパクする」ように、喘いでばかりいる。

母たちの、良心と自責の念と憤りが交錯する中で、
肝心の子どもたちは誰一人、何ひとつ真実を語ろうとはしない。

危機管理意識が希薄なゆえに、突然の事態に右往左往する教育者。
被害者からも加害者からも、さらには他の保護者らからも責め立てられ、
ネットには生徒の実名が出回り、何をやっても後手後手と叩かれる。

クラスメート。地元紙と中央紙の新聞記者。
誰もが息を詰め、苦悩とストレスに心を病んでいく。
あーもー、全員に感情移入できて、ホントに胸が苦しくなる小説なんですよ。

手足の生えたおたまじゃくしのような年頃の彼らは、
図体がでかくとも、口は達者でも本質的には未熟な子ども。
彼らの世界にはそれなりの掟や仁義があり、
時には真実が歪められて伝わっても致し方ないと考える。

大人たちが、いかに彼らに心を開かせ、事実を突き止めていくか。
けれど被害者と加害者双方のバックに地元の有力者が構えており、
捜査にも報道にも大きな障壁が立ちふさがる。

その後、物語はリアルな展開を経て、少しずつクラスメートや部活仲間など、
子どもたちの口から真実が明らかにされていきます。
そこで読者は真相を知ることができ、ストレスは残らないはずなんですが、

そうなんですが。

日本のあちこちで、これと同じようなことが起きているのだという実感は重く、
過激な報道による「被害者=善、加害者=悪」という単純明快な図式では
整理できない複雑な事柄が、当事者間にはあるのだろうなあと。

身軽に引っ越しもできない土地で、ただ苦しみは澱のように溜まり
時間が激情をおさえてくれるのを待つだけなんだろうなと。

・・・・

もちろん最も救いがないのは、命を落とした子どもとその親しかないわけなんですが。

「いじめはいけない」という表面的な教えより、攻撃本能を認めた上で
弱者とどう共存していくか、弱い自分とどう闘うか、が
自立に向かう思春期の教育に、根本的に欠けているのかもしれないと思う。
 
スポンサーサイト

テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

コメント
はい、私も読みました
ままりん様、このところ気が合いますね。

暑かった7月の三連休に一気読み。
たまには寄り道に感想を書こうと思い、汗かきかき書き上げたのですが、送信ボタンをクリックした瞬間、何が起こったのか、一瞬にして、すべてが消えてしまいました…
しばし呆然…
もう一度、一から書く意欲は湧かなかった…

奥田英朗は私の中では、浅田次郎センセイに次ぐ手練れ、と位置づけられています。
読み始めるとやめられなくなって深夜まで一気読みしちゃう確率は浅田先生以上かも。

この作品も、重いテーマではあるけれど、おもしろくて一気読みでした。
真相はどうなの? という興味で最後までひっぱっていくし。
(もしかして真相は藪の中、という結末なのか、とも思ったりしましたが)
登場人物それぞれの気持ちがよくわかるし。

この本についてはままりんさんの文章を読んでもらえばもう十分と思いますが、敢えて私の個人的な感想を付け加えれば

被害者側、加害者側、どちらの心情もよ〜くわかるのですが、中でも読者が(少なくとも私の場合)一番わかる! その通り! と思ったのは、被害者・加害者それぞれを間近で見ていた中学生、朋美。
まあ中学生なので、大人と一対一で対峙するとあまりしゃべれなかったりはするのだけれど、この子の視線が一番客観的で、読者の目線に近いのでは、と思いながら読んでいました。

それと、加害者グループとされる一団の中の母子家庭の子、健太でしたっけ。
この子はいいね〜!
友達のことを考えて、自分のことで言い訳したりせず。
細かい言い回しは忘れましたが、大人からすれば「君のやっていることは本当の男らしさじゃなくて独りよがりの行動なんだよ」と言われるようなことをしたりもするのだけれど、この子はいい男になるよ。
久々に本を読んでいて、いい! と思った男(の子)でした。

朋美が好きになっちゃうのもわかる。

などと、テーマは重いのに、言ってることは脳天気?
しかも読んでから時間がたっているので、記憶が薄れちゃっています…
[2013/08/05 21:30] URL | アビイ #EECaoQqg [ 編集 ]

幻の・・
アビイさま

消えてしまったのは、この本のことでしたか。
奥田さんはやっぱりハズレのない方だと思いますよねー。

『最悪』『邪魔』『無理』の流れにのるシリアスな作品と思いますが、
一気読みでした。冷や汗が出そうに身に迫る。

奥田さんは特に、地方都市の閉塞感をホントにリアルに描くのです。
地方出身者には、そこもまたアンタッチャブルな部分をえぐられるとこがあります。
どうも共感するところが多いので、調べたら岐阜の方なんですねえ。
岐阜と言えば・・・朝井リョウくん!

ちとはずれるけど、岐阜寄りの愛知県の地方都市なら中村文則さん!

恐るべし東海地区、恐るべし岐阜。
[2013/08/07 23:34] URL | ままりん #- [ 編集 ]


コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
http://marmadays.blog2.fc2.com/tb.php/632-20aa4e1b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)