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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『掏摸』
掏摸(スリ) (河出文庫)掏摸(スリ) (河出文庫)
(2013/04/06)
中村 文則

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帯に綾野剛さんの推薦コメがついた文庫です。

何もかも憂鬱な夜に』以来、中村文則さんの作品を読むのは
二度目ですが、これはまたハードで情け容赦ない、
切れ味鋭いナイフのような小説でした。

ハードカバーは2009年の刊行ですが、ワタクシの今年の
和モノ・初ベストに挙げておきましょう←ついに出た。
 
 
主人公は、幼いころから他人様のものをくすねて生きてきた
タイトルどおり、天才的な掏摸の男。

彼の生まれ育った背景やフルネーム、なぜここに行き着いたのかは
小説の中で明らかにされてはいません。
一度だけ苗字は出てきますが、特に意味あるものではありません。

彼はただ孤独の中に生きている。決まった職にも就かず、
もはや無意識のように金持ちの財布を盗み取る日々を送っている。

そんな彼を見込んで大きな仕事を持ちかけてくるのは
ヤバイ組織ばかりです。暴力団やヤクザというのとも違う、
底知れぬヤバさを持った、闇社会の組織です。

一匹狼の彼は所詮捨て駒であり、同じような捨て駒はほかにもいて、
連れ立ったこともあるけれど、最早その消息はわからない。

組織の黒幕、木崎だけが彼の本名を、素性を理解し、
彼の運命を自分の計画通りに動かしていきます。
まるで創造主のように。

そして彼の足元には、近所に住む少年がうずくまります。
売春婦の母と情人に虐待され、盗みを強要される子ども。
彼は幼い自分に重なるその子どもを見捨てておけません。

そんな現実世界とは別に、彼は意識の底に「塔」を思い描きます。
孤独な彼を導いてきた、象徴的な塔の存在を。
それこそが、彼を真に支配するものであるかのように。

物語は、木崎に言われるがまま仕事をする彼を出口のない未来に導いていきます。
息詰まるようなスリルと、絶望的な現実。
ハードボイルドな純文学、というべきか。

35歳という若さながら、完成度の高い、素晴らしい才能を持った方だと思います。

・・・・

この作品は第4回の「大江健三郎賞」を受賞し、アメリカで“THE THIEF”として
出版されており、ロサンゼルス・タイムズ文学賞の候補作となったことで
話題を集めました。受賞は逃したものの、ウォールストリート・ジャーナルが選ぶ
2012年のベスト小説10冊にも入っています。

てことで、先日、神保町で中村さんのトークイベントがあり、興味をもって行ってみました。

実年齢よりもさらに若く見える中村さんは、気取りも気負いもない、
とても良識的な、謙虚な方でした。

進行役の女性は、日本の小説をアメリカの出版社にプレゼンして売り込む方。
いわゆる「翻訳モノ」は3%しかないという米国の小説の中で
良質な翻訳者たちとの出会いや出版社のマッチングがマーケを成功させるなど
実業的な話は大変面白く聞くことができました。

「日本の純文学」ではオタクしかつかまえられないので、この作品は
クライム小説として、ミステリ系の小出版社から出されたとのこと。
宗教社会には、「悪とは何か」というテーマを持つ小説ジャンルがあるのだそうです。
アメリカでは「ドストエフスキーのミステリ」とも評されたらしい。

作家自身がプロモーションのために行うブック・フェスでの朗読やブース販売をはじめ、
まるでアカデミー賞のように、壇上のスクリーンに作家が大写しにされて
華やかに行われるLAタイムス文学賞の授賞式などなど、画像での紹介も面白かった。

居心地のいいリビングのような会場で、集まったファンと打ち解けて
話してくださる文学論も大変興味深く、ドストエフスキー、カミユ、カフカに
強く影響を受けていること、日本の作家では大江健三郎、安部公房に傾倒していることを
聞いて、なるほどと頷いた次第。
30代前後の若いファンに混じって、中高年の読者もかなり多かったのが印象的でした。

『掏摸』の続編として書かれた『王国』もぜひ読みたいと思います。
 
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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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