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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
池澤夏樹『双頭の船』(新潮社)
双頭の船双頭の船
(2013/02/28)
池澤 夏樹

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このところ短い間に、東日本大震災に触発され、その後の状況を素材にした小説を続けて読みました。いとうせいこうの『想像ラジオ』と池澤夏樹の『双頭の船』の二冊です。いずれもファンタジーの形を借りることで、リアルな描き方では表現できない部分を巧みに描いています。そう、ともにテーマは、「死者と如何に向き合うか」です。
 
  
ここからは僕個人の好き嫌い、好みの問題になります。僕は、後者、池澤作品の方にグッときてしまいました。その理由を考えると、「死者と如何に向き合」っているか、その両作家の姿勢の違いかな、ということに思い至ります。もちろん、どちらが正しくて、どちらが間違っているってことはありません。そういうことはまったく問題ではなく、あくまでも僕自身の感想です(しつこいね)。

いとうせいこうは、震災で亡くなった死者そのものの視点から。池澤夏樹は、震災後を生きている者(知り合い・縁者を震災でなくした者も含め)の視点から。――この視点の違いが、作品に大きく影響しています。

『想像ラジオ』の主人公は、震災で命を落とした主人公が、なぜか杉の木のてっぺんからラジオのジョッキーになって放送を続けています。死者である彼の声は、同じ死者の耳には届きますが、生きている人たちには聞こえません――生き残った妻子にすら……。

『双頭の船』は、震災地をめぐる船に乗り込んださまざまなボランティアたちと、船に移り住んだ震災地の住民たちの群像劇です。ファンタジーなので、船は震災地をめぐり、住民を受け入れるたびに増殖し大きくなっていき(島から島を結んでいたフェリー「しまなみ8」は、やがて仮設住宅や水耕栽培の畑を持つ「さくら丸」に成長していきます)、ついには二隻に分離し、片方は独立国家を掲げ航海を続け、片方は陸地となって街になる道を選びます。船に移り住んだのは、震災被災者ばかりではありませんでした。生者が気がつかないうちに、無念の死を迎えた彼らの知り合い・縁者たちも移り住んでいました(鳥や動物たちも)。

8篇の連作短編の中で、僕が一番好きなものは、「さくら丸」と「フォルクローレ」の2篇。ともに震災で夫と子ども一人、妻と子ども一人を亡くした男女がさくら丸で知り合い、ついには結ばれ新しい家族となっていく「さくら丸」。生き残った子どもたちが遊びまわる姿に、夫と妻は死んでしまったお互いの子どもが混ざっているのを知ります。結婚式を祝う人々の中に、亡くなったそれぞれの妻と夫の姿を見てしまいます。この船では、生者と死者が共生しているのです。しかし――「フォルクローレ」では、それではいけない、死んだ人は向こう側に行かなければいけない、生きている人は死んでいる人を見送らなければいけない……。船上パーティのざわめき、祝祭の音楽が流れの中で、死者たちが連れ添って「向こう側」に歩み去っていくシーンは、涙を誘います。


「しかたがないんだ。いつまでもなかったことには出来ないんだ。
みんなそれはわかっているけれど、それでも別れることは辛い。
別れを納得するために人は何度も何度も別れをしなければならない」

池澤夏樹の眼差しの先にあるものを、僕たちも見続けて行きたいと思いました。
 
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テーマ:小説 - ジャンル:小説・文学

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