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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
有栖川有栖『江神二郎の洞察』(東京創元社)
江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ)江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ)
(2012/10/30)
有栖川 有栖

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本書の「あとがき」を読むと、大学生の有栖川有栖を語り手にしたミステリ〈江神二郎シリーズ〉は、
長編5作、短編集2作で完結させる予定とのこと。すでに長編は4作が発表されているので、残りはあと1作。
短編集は、有栖の大学生活を入学、推理小説研究会入部から時系列にまとめ、長編で扱った事件の合間合間に起こったささやかなエピソード集として、〈卒業アルバム〉となることをを意図しているという。
第1集の本作では、有栖が推理研に入部した1回生(なぜか関西の大学ではこう言うんだよね)の春から、唯一の女性部員となる有馬麻里亜が入部する2回生の春までの1年間を9つのエピソードで描いている。
 

ときはバブル経済末期、昭和が終わろうとしている年の京都。携帯電話もインターネットもない、おしゃれとも無縁な時代の学生生活。人生のモラトリアムを過ごすのに最適な、時間がゆっくりと流れていくような京都での学生生活。27歳の留年生で名探偵役の推理研部長の江神二郎、先輩部員の織田と望月の凸凹名コンビ。そして、有栖と推理研にとっての〈ファム・ファタル〉となる麻里亜。なんとも羨ましい設定だ。
 
実は、僕自身、20歳代の後半、みずからの大学生活をモチーフにしたミステリ4部作の構想を練っていた。1年生から4年生までの4年間、それぞれの四季に起きる一つ一つの殺人事件。第1作予定の夏編は、古墳発掘現場を舞台にしたミステリで、これには僕の発掘現場でのアルバイト体験を活かすつもりだった。続く2作目の秋編は、大学祭を舞台にしたものにするつもりで、それぞれのトリックはできあがっていた。当然、日の目を見ることもなく、構想のままに終ったが、のちに有栖川有栖のデビュー作『月光ゲーム』を読んだときには、やられたっ、と思ったものだった。
 
京都という街と大学生生活が妙にマッチしていることは、例えば映画では大森一樹の「ヒポクラテスたち」を見ても、小説では『鴨川ホルモー』などを読んでもよくわかる。街が東京ほど広くなくそこそこであること、長い歴史を持ちながら決して保守一辺倒ではなく革新的でもあること、文化的にも伝統的にも成熟している街であること、そして何よりも政治・経済の中心を誇る東京に対する対抗心――学問に対しての自由な取り組み方が影響しているのだろう。

再びの話題で恐縮だが、実は、僕自身、高校生のころ、進路面接で担任教師に志望大学を問われ、それに京都大学と応じ絶句された経験がある。当時、梅棹忠夫に憧れていた僕は、京大の人文科学研究所に入りたくて、なんの受験勉強もしないまま夢のようなたわごとを口にしていたのだ。

本書に収められた9つの短編の中で、僕が一番興味を持って読めた作品は、「除夜を歩く」(ミステリファンならばこのタイトルを見ただけで「あの名作」へのオマージュであることが想像できるだろう)。昭和最後の大晦日、西陣にある江神部長の下宿から八坂神社に向かう二人のミステリ談義は、少しでもミステリを読んだことのある人、ミステリに興味を持ったことのある人にとっては、楽しくウンチクに満ち、かつ刺激的ですらある。

「ポオを起源とするミステリは、なぜに怪奇と幻想を離れ、独り歩きを始めたのか」
「名探偵の推理は、殺されて物言えぬ被害者の声を聞くのに等しい」
「もともと名探偵の推理というのは、〈閉じた城〉の中やからこそ見られる幻かもしらへんのや」
「ポオが描きたかったのは盲点の見つけ方で、トリックそのものと言うよりトリックの原理や」
「ミステリの世界では、トリックはロジックに優先するぞ」

この語りを読んで、頭でっかち、屁理屈、小難しい……と言わないでほしい。話題は異なるものの、かつて学生だったころの僕たちも、夜を徹してしょうもないことを語り明かしたことを思い出す。答えはすぐに見つかることはなく、迷い込んだ迷宮はその出口はおろか一歩先もおぼつかない状況だ。――帰るべき部屋は遠い、会話につかれた有栖はそうつぶやく。それでも……

「気ままに歩いたらええやないか。京都の道は碁盤の目や。なんぼでもルートはある」

江神部長のこの一言に、有栖も僕も救われる。
 
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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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