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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『僕の心の埋まらない空洞』
僕の心の埋まらない空洞僕の心の埋まらない空洞
(2012/09/21)
平山 瑞穂

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本命の恋人や愛する妻がありながら、
なぜ違う女を求め、愛してしまうのか。

・・・という身勝手ながら大変リアルな男の心理を
深く深く掘り下げて、ううむ、と納得させられてしまう
作家の力量をずしりと感じる作品です。
 
以下、ネタバレですが、なおさら
めっちゃ読みたくなると思いますので、あえて。
  ↓
 
 
 
舞台は路面電車の走る地方都市。
検事の荒城(あらき)は43歳。札幌赴任前の最後の仕事として
とあるストーカー殺人事件を抱えています。

被疑者の鳥越は出版社社員。婚約者のある身でありながら
職場の後輩、沙菜絵と何年にもわたって深い関係を続け、
鳥越の結婚を境に離れていく彼女を執拗に追い、ついには殺してしまう。

という、世間にはよくある事件なのですが、鳥越は言う。
罪は認めるが、沙菜絵との関係の真実を奥底まで理解してもらいたい、
と延々自分の心情を吐露し続けるのです。

曰く、本命は婚約者から妻となった真希だが、沙菜絵は二番手でもなく、
本質的な存在。本命以外に深い関係の女性が身近にいて、それが
本命を脅かす存在にはならないこと、それが自分の望みであったと。

二股をかけるという単純なものではなく、二人揃って初めて意味ある存在となる。
大きな部分を本命の真希が占めても、どうしても埋められなかった何かを
沙菜絵が埋める。どちらの配置も入れ替えられないと。
だから鳥越は妻に対して何の罪悪感をも持っていないのです。

それが身勝手な理屈だと鳥越は自覚しています。自分は最低な男だとも。
彼は沙菜絵が離れていく穴を埋めようと、他にも二人の女と不倫をする。
しかし他の女は、真希や沙菜絵のような価値ある女ではない。
だから沙菜絵が、女の理屈で「友だち」という聞こえのいい名で
二人の関係を綺麗事に書き換えようとするのが鳥越は許せない。
沙菜絵だって恋人がいながら、自分をあれほど愛し求めたではないかと。

沙菜絵を追い詰め、憔悴しきった彼女を見ることで、彼女の苦悩が
自分への関心の深さを表す指標のように、歪んだ満足を覚えていく。

そこでですね。

「堅物」の評判高い荒城もまた、鳥越の話に仕事の立場を離れて
いつしか共鳴している自分を感じてしまうのです。
荒城にもまた、自分には過ぎた妻であり最高の女性と思うちづるがいる。
子どもはいないけれど夫婦二人で仲睦まじく暮らしてきた。
けれど新婚当時、ちづるの後輩、律子と逢瀬を重ねていた時期がある。
食事がメインの、深い関係ではない。腕を組むのがやっとの、恋愛でもない。

離婚の事由になるような「浮気」じゃないと言い切れる。
それでもちづるに疚しさがあり、それを知られたことが夫婦仲にかすかな傷を残す。
とはいうものの、荒城は後悔していない。
ちづるを捨てる気はないのに、律子に惹かれた感情を荒城は説明できず、否定できない。
だから、鳥越の話にどんどん引き込まれていってしまう。

そして荒城はまたも・・・

というね、

もうネタバレバレで書いてしまいましたが、
いやーとにかく読ませる読ませる。

そう、タイトルの「埋まらない空洞」は、男の心の空洞なんです。
女だって埋まらない空洞を抱えているものですが。

実はこれ、先ごろツイッター文学賞を受賞した小田雅久仁さんが
抽選で投票者の一人に新潮社の出版物10点をプレゼントする、
ていう企画で、セレクトされた作品のひとつだったのです。

内容を知らずに読み始め、最初は警察小説かと思ったら、
まったく違う、むしろ白石一文さんに近いような、男側の心情を
突っ込んで書いた小説で、もうその理屈は女からすれば「ありえねー」
てなもんですが、しかし説得力のある筆致にねじ伏せられてしまい、
男の気を引く女側の狡猾さも自覚させられてしまうという、
すごい力のある作家さんです。

平山さんもまた日本ファンタジーノベル大賞受賞者ですが、
恐るべし、な文学賞だなあ。

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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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