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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
海道龍一朗 『華、散りゆけど』
華、散りゆけど 真田幸村 連戦記華、散りゆけど 真田幸村 連戦記
(2012/11/05)
海道 龍一朗

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一言で言って、「雄渾」。
作中で使われる言葉を借りるならば、「漢(おとこ)」の生き様、死に様を描いて、
感動の傑作時代小説です。
 

 
日本の歴史で常に人気がある人物は、日本人の判官びいきの現れもあるでしょうか、
やはり悲劇の英雄たちが多いようです。志半ばで斃れた織田信長や坂本龍馬を筆頭に、
中央権力に抗したアテルイ、肉親に謀殺された源義経、義に殉じた大谷刑部や、
病魔に侵された沖田総司と負けることを承知で死地に赴く土方歳三の新撰組コンビらが、
すぐに浮かんできますね。
そして、本編の主人公、真田幸村もまた、圧倒的勢力の敵軍に敢然と立ち向かい、
大儀に殉じた侍として人気を博しているのです。

真田三代のサーガを扱った大河小説には名作が多いですが、
本書ではあえて真田幸村一人にスポットを当て、しかも大坂冬・夏の両陣にしぼって、
幸村最後の光芒を劇的に描ききっています。

ところで、真田幸村を演じた役者というと、みなさんは誰を思い出しますか?

僕のような世代では、1963年公開の映画「真田風雲録」(加藤泰監督!)と、
66年のテレビ「真田幸村」で、ともに幸村を演じた中村錦之助(後の萬屋錦之介)を
どうしても当てはめてしまいます。
本書でも、何度も幸村の風貌を、「長い睫毛を伏す」と描いていますから、
作者にとっても幸村=錦之介のイメージがあるのかもしれませんね。

幸村をはじめ、本書で描かれる大坂方の武将たちは、その誰もが心に傷を負っています。
幸村、後藤基次(槍の又兵衛)、毛利勝永、大谷吉治、長宗我部盛親らは、豊臣恩顧の武将でありながら
先の関ヶ原の戦いで敗軍となった西軍側についたため、ある者は領地を奪われ、ある者は肉親・家臣を失い、
ある者は浪々の身となって各地をさまよい、そこから生まれた鬱屈した想いを払拭することを望んでいます。
それは取りも直さず失われた武将としての矜持を取り戻すことであり、
それゆえに彼らはこの乾坤一擲の戦いに命をかけているのです。

久度山を出て、大坂城に入城するに臨み、幸村はこうつぶやきます。

「この戦(いくさ)は生ける屍も同然だった己に与えられた千載一遇の機会だった。
つまり、己の生様を取り戻し、貫き通すための戦いである」

このように勇敢で雄々しい武将である幸村ですが、本書では以外な別の一面もしっかりと描かれていて、
それが完全無欠のヒーローではない幸村の魅力を増幅しています。

助っ人待遇で入城し、凡百の譜代家臣たちを尻目に頭角をあらわし、
冬の陣では出丸(世に名高い真田丸)を築き徳川軍を翻弄した幸村。
それでも幸村からわだかまりが消えることはありません。もともと関ヶ原の戦いの際の上田城籠城戦は、
父の昌幸の指揮のもとに戦っただけの幸村です。
父を超えることができるのか、というコンプレックスは常に幸村を悩ませています。
加えて、15年余にわたる蟄居生活で武将としての勘や才覚は鈍っているのではないかとの不安もあります。
実際、夏の陣劈頭では、わずかの行き違いから盟友の後藤基次を見殺しにしてしまいます。

やはり、自分はもう武将としてはダメなのか……うじうじと煩悶する幸村に、
英傑・ヒーローとしての面影は微塵も感じられません。

だからこそ、夏の陣のたった一日の幸村の奮戦を描く最終章は感動的なのでしょう。

茶臼山に陣取り、押し寄せる徳川15万の軍勢と対峙する幸村。朱塗りの具足に身を包み、
朱塗りの兜をつけ、朱塗りの十文字槍を持ち、屹立する幸村。
従うは、これまた朱色の地に金泥の六連銭の旗指物を背負う、後世、「真田の赤備(あかぞなえ)」と
畏怖された精鋭の家臣たち(講談でお馴染みの「真田十勇士」は出てきませんが、
そのモデルとなった武将は何人か登場します)。

繚乱の蓮華躑躅を想起させる赤備の中心にあって、幸村の胸に去来する
「自分はここに立つために生まれてきたのだ……」
という想い。すべての雑念や怖れを捨て去った幸村――。
「狙うは、家康の首級(しるし)、ただひとつ!」

二重、三重の仕掛けを打ち、家康の首を獲ることだけを目指して敵陣を駆け抜ける真田軍。
敵をして、「真田日本一の兵」と言わしめた鬼人のごとき真田軍。斃れる仲間をかえりみることなく、
自らを一本の矢と化し、家康の本陣に迫る真田軍。
その疾走感、その勇猛さ、その悲壮美を、刮目して視よ!!

真田幸村の生涯と、大坂の陣の結末。そして、その後の歴史を僕たちはよく知っています。
ただ、よく言われているように、歴史は勝者が作るもの。
ひょっとしたら、本書で描かれたような「真実」もあったのではないか、
そう思わせてやまないエピローグには、本編の激しさとは別個の実に味わい深いものがあります。
 
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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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