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読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『終わりの感覚 』
終わりの感覚 (新潮クレスト・ブックス)終わりの感覚 (新潮クレスト・ブックス)
(2012/12/21)
ジュリアン バーンズ

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某氏より思いがけずいただいた、ブッカー賞受賞作。さっそくですが、

今年初のベスト本です
 
『終わりの感覚』とは、人生の終わりなのだと認識して読みはじめました。
現役を退いた60代の今も、穏やかな希望を心に抱いて生きるトニー。

若き日のそれとは質の異なる老いた日々を、さらに老いゆく日々を
彼は薄れゆく記憶の断片で、人生のエピローグとして編もうとしています。

最初の一行目から、作家は洗練された映画的な導入場面を用意し、
読者は想像力を掻き立てられて、物語に吸い込まれてしまいます。

人生の後半戦に入った読者ならば、もう特に。
 
書きます。長いです。
 

  
自他共に認める「速読み」のワタクシが、思いのほか時間がかかったのは、
一語一語が心の奥深くに染み入るようで、ページを繰るのが惜しいほど
すみずみまで味わいながら 読んだからなのです。

トニーはいう。

人生の証人がしだいに減っていき、記憶の補強がおぼつかなくなり、
自分が何者であり、何者であったかがしだいに不確かになっていく。


若者は老いの惨めさを想像することはできても、それがどんな感じか
新たに湧いてくる感情がどんなものかはわからないのだと。

十代で失った恋の相手、ベロニカ。
十二年で破綻した結婚相手、マーガレット。

社会的にはそこそこの成功を見ながら、隠居後の暮らしの中で
トニーの心を占めるのは、二人の女と、失くした愛の追憶です。

愛とは真実とはなんだったのか。悔悛に包まれるトニーの独白は、
静謐でありながら枯れてはおらず、ときに強い情念に包まれます。
それが、まさに共感をもって胸に押し寄せてくるのです。

純文学の力はこれなんだ。なんで本を読もうと思うのか。
自分ではうまく折り合いのつかない気持ちを
解き放してくれるからなんだと、わからせてくれる本なのです。

あ、言い忘れたけど大好きなイギリスが舞台ってとこもあるけどね。

・・・・・

ところがどっこい。
後半は、なんともミステリ的展開が待ち受けている。

ある日、見知らぬ弁護士から送られてきた手紙がトニーの全人生を覆すのです。

十代の青春期の4人の男友達の友情。
いちばん頭が良くて沈着冷静だったエイドリアンの完璧なまでの自死。

それらすべてがノスタルジーではなくなって、今につながる事実の断片として
トニーの身に迫ってくる。

エイドリアンとベロニカの恋。トニーの嫉妬。悪意。
『こころ』を彷彿させる設定ですが、しかしトニーは恋の勝者ではありません。
死ぬことで、ある意味自分の意思で人生に切り込んでいったエイドリアン。
トニーは、漫然と生き長らえた自分と比して、彼をどこか羨む気持ちもある。

生き延びた人間どうしが数十年の時間を経て再会し、
トニーは欠けていた記憶がつながり、自分という人間にまじまじと向き合う。
年月は途切れることなく、今日までつながっている事実を知る。

まるでパラレルワールドのように。

終わりの行まで読むと、あらためて1ページ目から
すべて布石が用意されていたと知るのです。すごい構成力。

そして結末は、あまりにも意外で驚かされます。
というか、答えは読者の想像力の中にある。
何が真実か作家は明らかにしない。謎解きだけが残されます。
これだけで一昼夜語れそうです。

とても苦しく怖い本ですが、しかし、素晴らしい。
50代以上の方、すべてにオススメです。

・・・・

『降霊会の夜』といい『父と子のフィルム・クラブ』といい、どうも
さいきんは、老いて孤独な男の人生振り返り本に惹かれております。
なかば男として生きてきた人生なので、おじさんに共感するんでしょうか。

人間は業が深い、しかし奥が深い。


☆土屋政雄さんの訳文は素晴らしいです。
 哲学的、観念的な文章も、わかりやすく日本人に伝わりやすい訳語にしてくださってます。
 で、一体どんな原文かと、図書館で原書を取り寄せ中。謎解きのヒントにもなるかな。
 
The Sense of an EndingThe Sense of an Ending
(2012/03/01)
Julian Barnes

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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

コメント
原文を読まれたら・・・
原文をお読みになったら、ぜひ、ご感想を聞かせてください!
[2013/02/12 12:30] URL | ヨシモト #lyVnroUc [ 編集 ]


>ヨシモトさま

読みました読みました!
中編で、難解な構文はほとんどないのと、先に和訳を読んでたおかげで
割とスムーズに読むことができました。

全体的に観念的な訳が多いので、キーワードのいくつかで
原語を知っておきたいものがあったのです。

そのひとつが「血の報酬」。これは「blood money」でした。
辞書で見ると「殺し屋への謝礼金」または「被害者遺族への)慰謝料」
となっていますが、もちろんこの小説ではそんな意味ではありません。
では、どんな意味・・?

この理解で良いのかとあれこれ悩みましたが、原書と併せて読むことで
「うん、やっぱりそういうことだ!」と、改めて人生の重さを知ったのでした。

凄い傑作です。

[2013/02/22 00:22] URL | ままりん #- [ 編集 ]


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