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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
神崎京介『新・花と蛇』(講談社)
新・花と蛇新・花と蛇
(2011/05/27)
神崎 京介

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SM小説の巨匠、故団鬼六をして、「私の跡目を継ぐのはこの男しかいない、ぜひとも続編を書いて欲しい」と言わしめた神崎京介。この新進気鋭の官能小説家による、鬼六畢生の傑作『花と蛇』の続編こそが、本書『新・花と蛇』であります。前作完結20年の後の、被虐のヒロイン静子の姿を描き、鬼六ワールドの暗い愉悦を堪能させてくれます。
 

 
財閥令夫人として何不自由のない生活を送っていた若妻静子は、悪人たちの悪だくみによって拉致、監禁されてしまいました。合法的に全財産を奪い取られ、目の前でいっさいの洋服やクレジットカード、免許証をはじめ過去の手紙や写真などを焼かれ、みずからの存在を証明するもののすべてを喪い、身も心もなすがままにされるマゾ人形として幸せの絶頂から奈落の底に突き落とされてしまいました。
 
20年にもわたる激しい折檻と調教の日々は、当時、24、5歳の貞淑な人妻だった静子をSM奴隷に変え、真性マゾヒストとして目覚めさせていました。厳しい調教――例えば、数珠繋ぎになった直径3センチの丸い金属の玉を、毎日、割れ目に入れさせられ、その玉を割れ目の奥の襞の動きだけで出し入れさせる練習。これをマスターすることで、静子は、襞をみずからの意思で動かせるようになり、割れ目の奥を自在に狭くさせ、挿入してきたご主人様にこの世ならぬ喜びと絶頂を感じさせることが可能になったのです。

最上級の技巧を持つ高級娼婦として日々変態プレーのいけにえとなりつつも、口、お尻の穴、女性器の三つの穴でご主人様に奉仕することに暗い喜びを感じてしまう静子。そんな運命を呪いつつ、SM地獄を生きる静子の唯一の希望は、かつて調教の果てに強制的に人工授精、妊娠させられ、あげくは恥辱にまみれて産み落とした子どもへの思いだけでした。出産と同時に引き離されてしまった子どもは、今どこで生きているのか。どんな若者に成長したのか。会うことはできるのか――この思いだけが、何度も訪れた死の誘惑から静子を救い、ぎりぎりのところで生きる目標となっていました。

こうした前作のストーリーを引き継いで描かれる本書は、生き別れになった娘の繭子を登場させることで、静子を今まで以上の絶望と被虐の世界へと導き、救いのない物語を紡いでいくのです。

19歳になったときにSM奴隷として売り渡されることを前提に育てられていた繭子。静子は高級娼婦として買われた箱根の別荘で、縛り上げられ、恐怖と悲しみと絶望に打ちのめされたわが子との再会を果たすのです。母娘二人のSM奴隷――商品価値としてはこれに勝るものはありません。悪人たちは、そのために静子を調教し、繭子をお嬢様として育てていたのです。高貴なもの、美しいものを貶め、汚し、虐めたいという欲望がある限り、蜘蛛の巣にからめとられた蝶のように、二人はこの地獄からけっして逃れることはできないのでしょう。

物語は、娘を救うため静子が逃亡を決意するという思わぬ展開に発展します。もちろん、やすやすと逃亡を許すような悪人たちではありません。わざと逃がして、かりそめの自由を味あわせた後、再び捕まえて絶望の底に沈める。人間狩りの楽しみもそこに加わり、サディストたちは大いにその性癖を満足させるのです。

娘ともども捕らえられ、想像を絶する変態プレーを強要されながら、それでも娘とこれからもSM奴隷として生きていこうと願う、静子の決意が悲しみを誘います。

「苦しみや羞恥を我慢すれば、その後には必ず喜びが待っていた。それは生きる糧になり、生きたいという強い想いにつながった。マゾとして調教されても、それは心と躯から消えなかった」

かつて「エロ」と一くくりにされ蔑まれていたこの種の小説ですが、今では、SM小説、耽美小説、官能小説、暗黒文学、被虐小説……とさまざまな呼称こそあれ、ようやく文学の一ジャンルとして市民権を得るにいたっています。そこまでにいたる道程において、先駆者団鬼六が果たした役割は大きなものがあります。作者は、鬼六へのリスペクトをこめて、作中に鬼六本人を登場させています。そして、師匠鬼六の後を継ぎ、なおかつそれを超えていこうとする意思を示すように、作者自身をモデルにした若手SM作家に、静子母娘を憎悪に裏打ちされたSM行為ではない、愛に裏打ちされたSM行為で救いたいと宣言させています。

百花繚乱のSM小説界に、鬼六の衣鉢を継ぐ正統の後継者が現われ、着実に力をつけつつあることを寿ぐ、2013年初春です。
 
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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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