♪おすすめ Blog

カテゴリ

最新コメント

Link

ブックオフオンライン【PC・携帯共通】

このブログをリンクに追加する

プロフィール

おもしろ本棚

Author:おもしろ本棚
読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

検索フォーム

月別アーカイブ

QRコード

QR

おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『十六夜荘ノート』
十六夜荘ノート (一般書)十六夜荘ノート (一般書)
(2012/09/12)
古内 一絵

商品詳細を見る


仕事一筋の人間が、他者とのふれあいの中で人間性を取り戻していく、
というパターンは特に珍しいものではありません。
特にぎすぎすした人間関係や、殺伐とした社会情勢がとりざたされる現代においては、
誰もが心の中で求めているテーマなのではないでしょうか。

  
一流企業に勤め、若くしてそれなりの地位を得ているエリートサラリーマン大崎雄哉に、
ある日突然、ロンドンで客死した大叔母(祖母のお姉さんのことです、知ってました?)
から遺産相続の話しが舞い込みます。

都内の高級住宅地にある不動産と聞き、さっそくに住人の退去を求め、現地を訪れた雄哉は、
そこに建つ古ぼけた洋館を見てびっくりします。「十六夜荘」という名前のシェアハウスに住んでいるのは、
これまた雄哉から見れば世の中の落ちこぼれそのものの奇妙な住人たち。

ここまで読むと、皆さんは、ああ、彼らとのふれあいで雄哉はお金や仕事よりも
大事なものがあることをさとり、建物もそのまま、住人たちもそのままのハッピーエンドを想像しますよね。
まあ、実際、物語自体はそういうふうに終わるのですけれど、
ただそれだけではないところがこの本の読みどころなのです。

雄哉と住人たちのエピソードと平行するように、かつてこの洋館に住んでいた
大叔母笠原玉青(たまお)の青春が描かれていきます。昭和13年から22年までの、
戦中・戦後の混乱期を生きた玉青の手記(ノート)を間にはさむことで、
十六夜荘をめぐる物語に深みが出てくるのです。

華族の令嬢として何一つ不自由のない生活をおくっていた玉青は、
洋館の離れにたむろっている若く貧しい画家の卵たちとの交流を通じ、
次第に社会に目を向けるようになっていきます。戦争が激しさを増すにつれ、
玉青の生活もさまざまな制約を受けるようになり、画家たちも戦争協力を選ばざるを得なくなっていきます。
信頼する兄をはじめ、次々と戦地におくられていく画家たち。そして、敗戦……。
洋館を手離さなければならない玉青の苦悩と、取り戻すための努力……。

戦前の華族の生活、戦時下の画家たちの苦悩、戦後の闇市の実態などは、
資料をたんねんに調べたのでしょう、よく描かれています。
激動の時代を生き抜いた玉青には『風とともに去りぬ』のスカーレットを彷彿とさせるところもあります。
何よりも、暗黒の時代に生きる芸術家たち(しかも日本人に限らない)の青春は、
その中の一人がこうつぶやくようにいたましく悲しいものです。

「政治や戦争から程遠いところにあるのが芸術よ。弱いから綺麗なの。意味がないからすてきなのよ」

戦争の犠牲となった画家たちの作品や、兄が想いをこめて弾いたピアノは、
今も十六夜荘の離れに残されていました。
アルバムには若き日の玉青や画家たちの写真が貼られていました。
玉青や兄や画家たちの想いは、作品などを通して現代の奇妙な住人たちに受け継がれていたのです。
同じように、満月、ではなく、十六夜の月に想いをこめた玉青の願いも、
雄哉の生き方を変え、十六夜荘とともにこれからも生き続けていくのでしょう。

スポンサーサイト

テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
http://marmadays.blog2.fc2.com/tb.php/526-e54edadd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)