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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
大石英司『尖閣喪失』(中央公論新社)
尖閣喪失尖閣喪失
(2012/05/24)
大石 英司

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まず初めに次の歌を聴いてください。

「いかに正義の道とはいえど
身に降る火の粉は払わにゃならぬ」 (Youtubeにリンク)


大御所村田英雄先生の「柔道一代」の一節です。作詞は、これまた大御所星野哲郎先生です。

この歌詞は、よく憲法九条との関連で侵略者に対する自衛隊の対応を語る際に持ち出されています。
もちろん解釈は人それぞれでしょうが、他国との紛争を武力によって解決しないと謳った
憲法九条の理念(正義の道)は立派だけれど、理不尽な侵略を受けたとき自国の領土と
自国民の生命・財産を守るためには闘わなければならないこともある(身に降る火の粉は払わにゃならぬ)、
っていう解釈で語られる機会が多いですね。これは「自存自衛」のための戦争とも呼ばれてもいます。

でも少しでも現代史を学んだ人は、かつての帝国日本が、欧米の締め付けや経済制裁に耐えかね、
「このままでは日本はダメになる。アジア全体の平和と繁栄を守るため、
帝国は自存自衛の戦争をやむなくとする」という大義のもと戦争への道を選択し、
結果としてあのような悲劇を招いてしまったことを知っているはずです。

以上が、前フリ。


さて、この時期にこのタイトルの本となると、
いかにもキワモノっぽい話題性だけのような感じを受ける方も多いのではないでしょうか。

政権交代を果たした与党内閣が衆議院を解散し、総選挙が行われたその日。
大量の中国漁船が尖閣諸島への上陸をめざし侵攻を開始します。
乗っているのは漁民に扮した人民解放軍兵士。
インフレに悩む国民の目を日本との問題に向けさせ、領土を奪い返したことでガス抜きをし、
政権に磐石の安定感を与えるための高度な政治判断による作戦です。

ところが、日本もそうした状況はあらかじめ想定済みで、
ひそかに海上保安庁の最新鋭巡視船群が待ち構えています。
「戦争にしてはいけない」――両国はこの前提の下、武器を使用しない奇妙な攻防戦を繰り返します。
しかし、数に頼った中国軍をすべて追い払うことは物理的にも不可能。ついに、魚釣島への上陸を許し、
島には五星紅旗が掲げられます。総選挙で圧勝し新政権を発足させた新内閣を率いるのは、
自他ともに戦争おたくと評判の総理大臣。彼の命令で海保援護で出撃する海上自衛隊内には、
血判書を携えクーデターも辞さない勢力もあらわれます。
魚釣島と対峙する島に上陸し、制圧のための基地を設営した海自。一触即発の日中関係。

と、こまでは、日本政府も想定の範囲内。
ところが、最後の最後で日本の作戦は根底から覆されます。
日米安保条約の規定から介入を期待していたアメリカ軍がみごとに裏切るのですね。
中国から国債を叩き売るぞと脅されたアメリカは、安保条約を無視し、
われ関せずの態度を決め込むのです。
アメリカ軍の参戦により中国に撤退の圧力を加える作戦だった日本政府は作戦継続を断念、
尖閣諸島からの全面撤退を命令します……。

シミュレーション小説、ポリティカル・フィクション、情報小説……などと称される
この種の小説の成否を決定付ける要素は、まず作者の情報収集能力。
いかに世界情勢や政治状況を把握し、専門的な情報を自分のものにしているか。
次が、情報分析能力。膨大な情報群を整理・分析し、その内容の正しさや誤りを見極めること。
そして、最後に、これらをもとにした想像力。
ただ情報だけを並べた小説、映画のストーリーのような小説、人物がまったく描かれない小説など、
「読み物=小説」の態をなしていない類似作品が何と多いことか。
この小説がとてつもなく面白いのは、これらの条件をすべてクリアーしているためなのでしょう。
キワモノから一線を画した立派な作品だと思う次第です。

結局、日本は尖閣諸島を喪います。北方領土、竹島に続き、日本はまたしても領土を喪うのです。
しかし、尖閣を「喪失」したことで、得たものがあります。
総辞職を決めた新内閣(24時間の生命)総理は、こう語ります。

「日本は憲法改正へと動き、真の意味での自主防衛への道も拓けるでしょう。
対米追随も改まり、われわれは国家として成長するはずです」

このセリフを読んだみなさん。もう一度、冒頭の歌詞について考えてみてはいかがでしょうか。

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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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