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読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
『父と息子のフィルム・クラブ』
父と息子のフィルム・クラブ父と息子のフィルム・クラブ
(2012/07/20)
デヴィッド ギルモア

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ひとり息子を持つ親として、

なおかつ、ふた親揃った家で育ててあげられなかった身としては、
思いのほか心に響いてしまい、まるで映画を見た後のように余韻の残る

「胸きゅん」ならぬ「胸ずしん」な、ドキュメント本でした。
 
 
筆者デヴィッドはカナダの映画評論家&作家。
別れた妻との間に生まれた息子ジェシーは、15歳のとき
突然、学校をドロップアウトしてしまう。

前妻マギーからの「父親と暮らした方がいい」という言葉を受け、
デヴィッドは自分のフラットをマギーに明け渡し、
今の妻ティナとともに、マギーの家で3人暮らしを始める。

で、息子には「学校に行け」と言わないかわりに、週3本、
映画のビデオを一緒にリビングで観ようと提案し、実行する。

・・こう書くと、道を外しかけた息子を、確固たる情操教育で導いて
見事立ち直らせた父親の愛、みたいな本かと思うでしょう。
私も手にとったとき、そういう「上から」本ならヤだなあと思ってた。

でも、
ぜーんぜん違ったの!

ジェシーの不登校は勉強嫌いというシンプルなもので、彼自身に
大きな問題があるわけではない。まだまだ幼さを残してはいるけど、
複雑な家庭に育ったとは思えない素直な少年です。

外の世界にも出るし、自分より「格上」の少女に憧れ、
いくつかの恋のはじまりと終わりを経験して泣く、ピュアなジェシー。

デヴィッドは、何もしない息子を責めもせず、彼に見せたい映画を
体系的に用意してただ一緒に鑑賞し、語り合おうとする。
ジェシーとデヴィッドの間には、基本的な親子の信頼関係がある。

けれど、それは、自立にはまだ遠い不安定な思春期の息子と
仕事の口をなくして人生に自信をなくしかけた50男の父親との
実に危うい共依存でもあるのです。

デヴィッドは、他人から白い目で見られれば反論するけれど、
ジェシーとの接し方に信念を持てきれないでいる。
親として、人生の先輩として、範を示せないでいる。

得体の知れないバイトをはじめ、ときに外泊する息子を見守りつつも、
何度も携帯に連絡し、こっそり覗きに行き、過保護にもなる。
 
自分もかつて何度も経験した失恋の苦しみが、
同じように息子を傷つけることのないよう、平穏な日々が
息子に取り戻せるよう、祈り、苦しみ、やりきれなくなる。

それでも、共に見る数々の映画が、きっと息子の心に
何かを残すことをただ信じ、ジェシーに映画論を語り続ける。

ジェシーもまた、自分が父に頼りすぎると知りながら、
悩みを全て父に打ち明け、父の判断を仰ぎ続ける。

苦しいんですよ。どちらも。

しかし確実に成長するのはやはり子どもの方で、
ジェシーはコカインに手を出して命を落としかけるも、
好きな仕事を見つけ、好きな音楽を始め、父親に甘えながらも
いつしか客観視するようになり、哀れみの目を持つようになる。

そしてジェシーは、ある日、自立する。

自ら学校に戻ることを決意し、ハイスクールの卒業資格を取り直し、
やがて大学に行って、父の元を離れ、再び母のところへ帰っていく。

デヴィッドは、それを喜びながらも、息子が去っていくこと、
見終わらなかった映画があることを、取り残された者の哀しみとして
ただ静かに噛み締めていくのです。

・・・・

家族という、愛に満ちた厄介な関係。
親という人間の不確かさ、子育ての正解のなさ。

我が身を振り返れば、息子は勤勉とはいえないまでも学校に通い、
さほど危険なこともせず、母と二人の暮らしをまっとうに続けている。

それでも、ふと昔を振り返っては、あのときなぜ責めてしまったのか、
突き放すより前に、全身で無条件に受け止める時間が必要だったのではないか、
今に至る時間の流れで、いろんなことを考えてしまう。

私ひとりが母となり父となり、兄弟となって過ごした時間は
彼にどうはたらきかけたのだろうかと。

言わなければいけないのに言えなかったこと。
言ってはいけないのに言ってしまったこと。

家族、そして恋人。
人はなぜ、親しい関係であればあるほど、
言いたいことの真逆を口にしてしまうのでしょうか。

デヴィッドとジェシーは、4年あまりの月日を経て
閉じこもって映画を見続けた二人の日々から得たものを糧にし、
大人どうしの穏やかな関係を築いていきます。

父親が自分のことを書いた本を出すことを、快諾したこと、
それが何より、父への彼の感謝を表すものなんでしょう。
 
巻末には、デヴィッドが選んだ映画のリストがついています。
かなり昔の名画も多く、映画通でなくても親しめます。

心の迷い、苦しみを、本はもちろん、こんなふうに映画が支えてくれるなら、
よし、TSUTAYAで久々にレンタルしてきて
もっと映画を見てみようかとも思うのです。
 
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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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