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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
永瀬隼介『カミカゼ』幻冬舎
カミカゼカミカゼ
(2012/06/28)
永瀬 隼介

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現代の日本にタイムスリップした特攻隊員と若者たちが繰り広げる物語――。

この宣伝コピーを目にしたとき、僕は「あれ?」と思いました。
――このコンセプトって、まえに僕が書いた「あれ」にそっくりじゃないか。


今から3、4年前になりますが、ある音楽会社が映画の製作に食指を動かし、
オリジナル原作を公募したことがありました、性別・年齢不問。
ただ、唯一の条件として、音楽会社のプロデュース作品にあわせて、どんな形でもいいから
音楽をモチーフにしたエピソードにすること、だったような記憶があります。

この公募を受けて、僕は二つの作品を書き上げて応募しました。
そのうちの一つ、「さよなら、明日(あした)のイエスタディ」のモチーフが、
この『カミカゼ』のコンセプトとよく似ていることに気がついたのです。


――敗色濃い昭和20年初夏、特別攻撃隊の一員として沖縄上空に出撃した主人公は、
敵艦に体当たりする寸前、超自然現象に巻き込まれ現代の日本にタイムスリップしてしまいます
(このあたりやや強引)。

海上をゼロ戦で漂っていた彼は、「営業」で沖縄のライブハウスを回っていたロックグループに発見されます。
彼らは、たまたまライブがキャンセルされ、空いた時間を知り合いの舟で釣りをしていたのです
(こあたりも強引)。こうして、助けられた主人公と、現代の若者との交流が始まります。

特攻隊員とロックミュージシャンとの間で繰り広げられる「異文化交流」のエピソードが
前半のウリになっています。考え方の違いはもちろん、日々のちぐはぐな生活は時として
さまざまなトラブルを生みますが、やがて彼らの間には相互理解が生まれ、それは友情にまで育っていきます。

たまたま特攻隊員の主人公は音楽学校出身(ピアノ科)の学徒兵で、「音楽」という共通項が
過去と現代の若者を結び付けてくれたのです(このあたり応募条件に即する努力です)。
特に、グループの紅一点、ボーカルの女の子とはお互い惹かれあう仲になっていきます(このあたりお約束)。
当然、彼女に気があるほかのメンバーはいい気がしません(これもお約束)。

現代の生活に慣れるにつれて、主人公は次第に戦後の音楽
――洋楽・邦楽の区別なく――に興味を持ち始めます。
なかでも、ビートルズの楽曲、それも「イエスタディ」に惹かれることが、
映画のタイトルの伏線の一つになります。
また、ボーカルの女の子が渡す携帯電話の着信メロディが「イエスタディ」であることも、
余韻たっぷりのラストシーンの伏線になっています。

そうこうしているうちに、病気になったメンバーに代わってキーボード担当見習いとなった主人公は、
「営業」で全国を回るようになります。ロードムービーの魅力をあらわすため、
「砂の器」ばりの全国ロケーションを行いましょう。

持ち前の音楽センスを発揮して、グループの貴重な戦力になっていく主人公ですが、
ここのところ元気がありません。実は、主人公には将来を誓い合った彼女がいました。
彼女も同じ音楽学校(声楽科)に学んでいました。主人公は、彼女のその後、
つまり戦後をどう生きて、今はどうしているのかを知りたくなったのです。

ところで、タイトルは僕の好きな光瀬龍のジュビナルSF『あばよ、明日の由紀』をもじったもので、
特攻隊員の主人公がタイムスリップした「未来」で出会った楽曲「イエスタディ」に別れを告げる
という表向きの字面どおりの意味と、「明日」と「昨日」という相反する言葉を組み合わせることで
観客を煙に巻く効果も持たせています。

主人公の思いをかなえるべく、メンバーは彼女の消息を探すことを約束します。
今までの「営業」で知り合った全国の仲間を通じて草の根の捜索が始まります。

さて、彼らが知らないところでももう一つの「捜索」が行われていました。
タイムスリップの際の圧倒的エネルギーの放出は、巨大な磁気嵐となって沖縄地方を襲いました。
その影響を受け、沖縄駐留米軍基地のシステムは一瞬にしてダウンしてしまいました。
事態の解明に乗り出した米軍は、一人の二世情報将校に調査を命じたのです。

こうして、物語は、かつての恋人の消息を尋ねるグループと、エネルギー放出の謎を追うグループ、
それぞれのチェイスゲームの様相を帯び始めます。

かつての恋人は生きていました。戦後を音楽教師として生きた恋人は、
今は老齢の身を介護施設で暮していました(なんと彼女は特攻で死んだ主人公に
少しでも近づきたいという思いから沖縄に住んでいたのです)。
そこを訪れた主人公とロックグループ、そして追いついた情報将校。
それぞれの人生がクロスするラスト、奇跡は静かに舞い降ります……。


とまあ、こんなお話しなんですが、当然のようにもう一つの応募作ともども
第一次選考にもひっかることなく、消えてしまいました。
もっとも、映画製作の企画自体いつの間にかポシャったみたいで、その後の話は聞いていません。
今回、『カミカゼ』を読んでみて、冒頭のタイムスリップ・シーンや、ラストの終わらせ方などに、
かつての自作との共通点を感じ、懐かしくなった次第です。

肝心のストーリーはまったく違うもので、小説のほうが格段に面白く、
ぜひとも皆さんに読んでいただきたいと推薦させていただきます。

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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

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