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読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

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おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
朝倉かすみ『平場の月』(光文社、2019年)
203,200_

というわけで、次は今年読んだ本のうちのフィクション部門第一位。

精密検査で総合病院を訪れた青砥(男)は、売店で働く須藤(女)と再開する。二人は50歳に手が届く、中学校の同級生。卒業後、世の中はバブルとその崩壊、長い不況と変転し、二人の生活も結婚、離婚とかなんだかんだあって、「まぁ、しょうがないや」的に地元に戻っていた二人。そんな二人が再開し、お互いを「青砥」、「須藤」と気軽に呼び合う関係が始まる。
作者は、冒頭の第一章で、二人の付き合いの行方を明らかにする。戸惑い混乱する青砥の感情そのままの、主語も不明、時系列も乱れた第一章。そりゃぁないよ、という強引さで示される掟破りのネタばれに鼻白む。そしてぼくたちは、その「到達点」に向かってページを繰っていく。

50歳を超えて分別くさくなった大人だからだろうか、二人の付き合いはややもすればもどかしく感じられる。不器用で正直になれず、急ぎたいけれどそうもできず、一歩一歩、二人で歩んでいく。作者はそんな二人の関係を、長いアイドリングを経て低速で走り出した感覚、と表現する。ロウギアから一気にトップギアに叩き込む若者のような恋とは違う。しかし、この恋の道行きは高速での巡航運転に至る前にノッキングを起こし、路肩に止まりそのまま動くことはない。

須藤のキャラクターがいい。可愛げがなくて、意地っ張りで、気の強い、ちょっと見、付き合いづらい須藤。それは幼い頃に両親から受けた虐待に近い体験や、大人になってからの恋愛で手ひどく傷ついた心を隠すためのポーズなのだろう。そんな心を鎧って弱みを見せない須藤だから、青砥の気持ちを嬉しく思いながら、それを素直に受け入れることができない。結婚して二人だけの生活を求める青砥と、その気持を十分理解していながらそれに踏み切れない須藤。すれ違う二人の思い。難病ものにありがちなお涙頂戴、純愛至上主義的な描写を極力排除し、淡々と描かれた日々の生活が逆に胸に迫ってくる。

二人のたどり着く先を知っているぼくらは、「もっと急げよ、残された時間はわずかしかないんだよ」とあおる一方で、「あまりのめり込むなよ、かえって辛くなるぞ」と釘を刺す。

人が人を愛したとき、「このひとと生きていきたい」と思うことは当然の気持ち。そこに、「このひとと死ぬまで生きていくんだろうな」という「予見」を重ねることも、流れからいって当然の気持ち。それがいとも簡単に絶たれ、須藤がいなくなっただけで世界はこんなにも変わるのか――そう感じてしまう青砥の思いは、切なく、悲しく、辛い。


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テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

コメント

お腹がくちくなったら、眠り薬にどうぞ。
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。
[2019/12/18 20:57] URL | omachi #- [ 編集 ]


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