♪おすすめ Blog

カテゴリ

最新コメント

Link

ブックオフオンライン【PC・携帯共通】

このブログをリンクに追加する

プロフィール

おもしろ本棚

Author:おもしろ本棚
読書会「おもしろ本棚」のメンバーが、思い思いに「本」「映画」「モノ」「コト」を素顔で語ります☆

検索フォーム

月別アーカイブ

QRコード

QR

おもしろ本棚 Ver.2 <よりみち篇>
「おも本」メンバーが、本・映画・ドラマなどなど、熱く思い入れを語る<よりみち篇>。
黒川創『岩場の上から』(新潮社、2017年)


物語は、戦後100年(つまり2045年)の日本、関東平野の北端部にある架空の町、院加(いんか)の駅に、17歳の少年が降り立つところから始まります。この時代、自衛隊は軍隊となっていて、「積極的平和維持活動」の名目で、アフリカや東南アジアで実質的な「戦争」をしているのです。この院加の町外れには広大な陸軍演習場があり、その拡張工事のドサクサに紛れて、何と使用済み核燃料を地下深く埋めてしまおうとする計画も進んでいるらしいのです。霞が関の首相官邸の官邸地下室には、総統と呼ばれる元首相夫妻(今の首相夫妻にソックリ)が住んでいて、いまだ権力を握り政治に関与しているらしい……怖い世の中ですね。

怖いと言えば、作中、こんなセリフがあります。

「監視カメラだ、って言われたら、ぎょっとする。だけど、「防犯カメラ」って呼び変えたら、同じ代物でも、今度は安心するんだね」

さて、家出少年は院加にとどまることになり、平和活動をしている住民たちと知り合います。でも物語は、最初は主人公に見えた少年を置き去りにして、次々と登場してくる新しい人物の話しになっていきます。平和活動のリーダーとその愛人、最終処分場で儲けようとする不動産屋、院加を離れて東京で暮らすボクサー、その妹で町役場に務める少女、脱走兵と彼を助ける支援者……この一見何の脈絡もないように思える雑多な人々は、いつの間にか深い関係を結ぶようになり、やがて後半の「大事件」に収斂されていきます。言い古された表現ですが、ジグソーパズルのピース一片一片がはめ込まれていくことで、一つの絵になっていくような、そんな群像劇なのかもしれません。

作者は、登場人物の生活がどうなっていくのか、宣戦布告して「戦争」を始めた日本がどうなっていくのかなど、ひょいと投げ出したままで何の結論も出していません。物語は現在進行形のままで唐突に終わり、そこにカタルシスはありません。書きようによっては、ポリティカル・フィクションにも、ミステリにもなったであろう題材を、あえてタイトルにもなっている、町を一望する巨石に立って、つまり「岩場の上から」町を、そこに暮らす人々を眺める――全体を俯瞰する視点から描くことで逆にリアリズムを感じさせる、妙な感覚の小説です。

スポンサーサイト

テーマ:書評 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
http://marmadays.blog2.fc2.com/tb.php/1015-37f5210e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)